研究課題/領域番号 |
20K15187
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠藤 護 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (90848003)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 連続量光量子情報処理 / 光子数識別器 / 超伝導ナノストリップ型光子数識別器 / 非ガウス型量子状態 |
研究実績の概要 |
本年度の内容は主に二点である。 一つ目は昨年度に開発した超伝導ナノストリップ型光子数識別器の改良である。昨年度開発した光子数識別器は、信号の立ち上がり部分100 ps程度の波形から光子数を分別するものであった。しかし、実際に利用することを考えると、この光子数識別は使いやすいものとは言えなかった。その理由として、光子数を区別するためには帯域がGHz以上の高速な測定器が必要であり、一般には非常に高価であるため、限られた研究機関でしか使えないという課題があった。そこで本年度は、超伝導ナノストリップ型光子数識別に、チョークコイルを追加したものを作製した。チョークコイルを加えることで、そのインダクタンスと寄生容量による共振構造が出現し、波形に1 GHz程度の振動成分が出現した。この振動は数十ns以上の比較的長い時間持続し、その振動の振幅から光子数の情報を読み取ることができる。また、電気的なローパスフィルタを入れて積分することで、波高値としても情報を読み取ることができる。この改良により、帯域数百MHzの汎用オシロスコープでも光子数識別が可能になった。この内容は特許出願済みである。
二つ目は光子検出器を用いた非ガウス型量子状態の生成である。超伝導センサは波長1545 nm付近の通信波長帯でもダークカウントが少なく検出効率が高いセンサである。この特長を活かし、1545 nm帯でシュレディンガーの猫状態や、単一光子状態といった非ガウス型量子状態の生成に成功した。時に、これらの状態を表すウィグナー関数には負値が確認でき、極めて非古典性の高い状態であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、超伝導ナノストリップ型光子数識別器の改良は予定に入っていなかったが、このセンサの改良を行うことは今後の実験を遂行していく上で非常に重要であると判断した。結果、より使いやすい光子数識別器を開発に成功し、特許出願も行うことができた。 また、超伝導センサを用いて非ガウス型量子状態を作ることにも成功しており、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、光子数識別器の開発は一段落し、今後はこのセンサを利用した実験を行う。特に、これまでは比較的簡単な非ガウス型量子状態しか生成してこなかったが、多光子を検出することでより複雑な非ガウス型量子状態の生成を目指す。 また、光子数識別器を利用するに当たり、これまで使用してきた超短連続光ではなくパルス光を用いるほうが良い、ということも判明した。今後は数百fsから数psのパルス光源を利用した実験系を構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表などで旅費での使用を予定していたが、全てがオンライン開催になったため使用する機会が無くなった。
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