研究課題/領域番号 |
20K15191
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
安中 裕大 新潟大学, 工学部, 教室系技術職員 (20835699)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大強度テラヘルツ波発生 / 疑似プラズモン / モード制御 |
研究実績の概要 |
本研究は疑似プラズモンと電子ビームの相互作用による大強度テラヘルツ波の高効率な発生を目的としている。その達成のため、円筒型コルゲート導波管に形成される疑似プラズモンの多重モードの解析を行い、それをもとにコルゲート導波管を設計し、製作した。数値解析により、円筒型コルゲート導波管に形成される疑似プラズモンの特性が軌道角運動量と導波管の半径の比で決まるという知見を得た。コルゲート導波管の半径を変えることでモードの密度や疑似プラズモンの偏光が変化することを数値計算により確認した。数値解析の結果をもとに半径を調整した100GHzコルゲート導波管と25GHzコルゲート導波管を設計し、作成した。また、コルゲート導波管の径に合わせた電子ビーム源も製作した。 製作した100GHzコルゲート導波管と電子ビーム源を用いてテラヘルツ波発生実験を行った。コルゲート導波管の半径によって異なる疑似プラズモンモードが励起して放射が発生することを確認した。半径14.85mmの導波管からはモード数が44以上の軌道角運動量を持つテラヘルツ波が同時に励起され、半径が10.0mmの導波管からはモード数が19までの励起が確認された。半径が10.0mmの導波管からの放射強度は半径14.85mmの導波管からの放射より強くなる。また、コルゲート導波管の端での疑似プラズモンの反射条件を変えると強く励起されるモードが大きく変化することを確認した。高効率な大強度テラヘルツ波発生を達成するには最適な反射条件を調べる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、円筒型コルゲート導波管に形成される多重疑似プラズモンモードを制御し、電子ビームと疑似プラズモンの相互作用による大強度テラヘルツ波の発生を高効率にすることである。令和2年度はコルゲート導波管に形成される疑似プラズモンの多重モードを解析し、それに基づいたコルゲート導波管の設計と製作までを行う計画であった。しかし計画していたよりも順調に解析が進んだため、11月にはコルゲート導波管の製作が完了した。そのため11月から製作したコルゲート導波管を用いた実験を開始した。実験結果の解析により導波管の径によって疑似プラズモンの多重モードを制御できることが確認できた。しかし実験で得られた発生効率は目標値に達しておらず、目標の達成にはコルゲート導波管端での疑似プラズモンの反射条件の制御と電子ビーム源の改良が必要であるとの考えに至った。現在新たな電子ビーム源と反射板を設計中であり、それによって目標の効率を達成することが期待される。 以上から、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1. 疑似プラズモンの反射条件がモードの制御に与える影響を評価し、それをもとに反射板を設計する。反射条件は、共振モードの形成や放射の発生条件、電子ビームとの相互作用に影響を及ぼすため、これらを考慮した設計が必要となる。 2. 厚みが薄く、電流密度の高い円環電子ビームを発生させるため、テーパースリット構造を用いたビームリミッターを設計し、製作を行う。 3. 製作した25GHzコルゲート導波管を用いた実験を行い、疑似プラズモンモード変化が、疑似プラズモンの高調波によって発生する大強度Smith-Purcell放射へ与える影響を評価する。また、疑似プラズモンの励起による放射と大強度Smith-Purcell放射を比較・検討を行う。 以上の研究から得られた研究成果をまとめ、論文投稿や学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】事前の使用計画では電子ビームの低い電流量を計測するためのロゴスキーコイル式電流計を購入する予定であったが、新たに製作した電子ビーム源により、既存の電流計で十分計測可能な高い電流量の電子ビームが得られ、購入の必要がなくなった。また、参加した学会がweb開催になったため、旅費がかからなかった。 【使用計画】初年度の実験結果から、電子ビーム源のさらなる改良の余地が判明したため、新たな電子ビーム源の開発費への使用を予定している。
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