研究課題
テラヘルツ波は様々な分野での応用が期待されている電磁波であるが、その光源の開発は途上にある。本研究課題では電子ビームと疑似プラズモンの相互作用を利用した大強度テラヘルツ波光源である表面波発振器の改善を目的に研究を行った。表面波発振器は常温で動作でき、1T程度の比較的弱い磁場で動作できるため装置構成を小さくできるという利点がある。一方で他の代表的なテラヘルツ波光源と比べて動作効率が小さいという欠点があった。表面波発振器の効率の改善は小型で大強度なテラヘルツ波光源を実現する上で重要である。低効率の主な原因として複数の疑似プラズモンモードが同時に励起することでモード間に競合が生じることが考えられる。そこでサブテラヘルツ帯にあたる周波数100GHzで数値計算プログラムによる解析を行い、モード競合を回避する方法を模索した。解析の結果から、表面波発振器を構成するコルゲート導波管の径を変えることで形成される疑似プラズモンのモード数を抑制できることがわかった。径が30mmと20mmの100GHzコルゲート導波管とそれに対応する大きさの電子ビーム源を準備し、表面波発振器の動作実験を行った。この実験において使用した磁場の強度は0.8Tである。実験の結果両方の導波管を使用した表面波発振器から大強度の放射が確認された。放射の周波数は検波器のカットオフ周波数により特定しており、74から116 GHzの間である。放射の出力から表面波発振器の動作効率を求めると、径30mmの場合効率1%であったのに対し、径20mmの場合効率8%が得られた。研究実施計画で当初目標にしていた動作効率10%には達しなかったが8%という近い数字を達成できた。この研究成果により大強度で小型なテラヘルツ波光源の実現に近づいたと言える。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Plasma and Fusion Research
巻: 17 ページ: 2406036~2406036
10.1585/pfr.17.2406036