高出力な超短パルスレーザーは微細精密加工などの産業分野をはじめ幅広い応用があるが、利得狭窄という現象により高い出力と短いパルス幅の両立はこれまで困難とされてきた。本研究ではこの利得狭窄を補償し、フェムト秒 (10-15秒)のパルス幅と高い出力を併せ持った超短パルスレーザーを開発することを目的とする。具体的には共振器中に回折格子を組み込んだ新規コンセプトの利得狭窄抑制レーザー増幅器を提案する。これによりレーザー光は共振器中で波長成分ごとに分割され、励起レーザーの空間強度変調と組み合わせることで、スペクトルの狭帯域化を抑制する。本研究ではまず利得媒質モジュールと励起光学系の開発を行い、次にそれらを用いた増幅器を構築することで本コンセプトの原理実証を行う。 本年度は前年度に作製した利得媒質と励起モジュールを用いた超短パルスレーザー発振及び増幅に取り組んだが,代表者が所属を異動したことにより光学系の新規組み直しが必要になったことと,新たに購入した半導体レーザーの波長が媒質の吸収スペクトルと整合していない問題などにより,当初の目的を達成することは出来なかった. しかしながら,異方性媒質を用いた薄ディスクレーザーに関する熱機械的解析や分光光学系の設計など,今後の計画のために必要となる成果を得ることができた.今後は得られた知見を活かし,薄ディスクレーザー上での分布を持った励起形状の実現と,それによる利得の変調を目指す予定である.
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