研究課題/領域番号 |
20K15195
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
望月 健太郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50868768)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ラマン散乱顕微鏡 / 撮像高速化 / 細胞分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、目的に応じて検出対象とするラマンスペクトル領域(以下、検出波数域)を限定することで、ラマンイメージングの高速化を実現する。 初年度は、検出波数域の限定に応じた撮像高速化を可能にする多焦点ライン照明型ラマン散乱顕微鏡の構築、および特定の細胞分析応用に要する検出波数域の見極めを行なった。 多焦点ライン照明型ラマン散乱顕微鏡の構築では、既存のライン照明型ラマン散乱顕微鏡の内部光学系に、ライン照明を多焦点化する光学素子(デジタルマイクロミラーデバイス/空間光変調器)およびスペクトル検出の多重化に必要な素子(スリット/光学フィルタ)を組み込むための光学系設計および仮構築を進めたところ、素子由来の不要な散乱光が想定以上に強く出ること、また既存光学系の構成上十分な遮光措置が困難であることがわかった。そのため、追加光学系を既存光学系外部に導入する設計に変更し、再構築を進めている。 光学系の再設計と並行して、既存のライン照明型ラマン散乱顕微鏡により取得したラマンイメージングデータを基に、生体内異物検出および肝臓脂肪化早期検出に要する検出波数域を探索した。生体内異物検出ではモデルとしてポリスチレン球とPMMA球を取り込ませた培養白血球細胞を対象に、細胞全体像/脂肪滴/ポリスチレン球/PMMA球の同時検出を可能とする検出波数域を追求した結果、2750cm^-1の以上の高波数領域が該当した。同様に肝臓脂肪化早期検出では、モデルとして高脂肪食給餌を施したラットの肝臓を対象に、それぞれコレステロール、レチノール、脂質に起因するラマンピークを含む3つの波数域のみを参照することで、肝臓の脂肪化早期を鋭敏に捉えられることがわかった。 次年度は多焦点ライン照明型ラマン散乱顕微鏡を完成させ、甲状腺癌細胞腫判別における検出波数域の選定も加え、各測定対象におけるラマンイメージング高速化を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り、多焦点ライン照明型ラマン散乱顕微鏡の構築にあたり再設計の必要性が生じたが、再設計と並行して測定対象ごとの検出波数域の選定を前倒しで開始したため、本研究の総合的な進捗に遅れは出ていないと判断する。また、本研究における具体的な測定対象の一部である生体内異物検出および肝臓脂肪化早期検出に要する波数域の選定は概ね達成しており、多焦点ライン照明型ラマン散乱顕微鏡完成後に選定結果を反映させ測定の高速化を検証する準備も進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、多焦点ライン照明型ラマン散乱顕微鏡を次年度早々に完成させ、同時検出スペクトル数10,000本を目安として、高速撮像能を評価する。その上で、初年度に検出波数域の選定を済ませた生体内異物検出および肝臓脂肪化早期検出につき、選定結果を測定条件に反映させ、測定の高速化の可否、および従来のラマン散乱顕微鏡と比較した高速化の程度を評価する。同時に、その他の細胞分析例として甲状腺癌細胞種判別を対象に、判別に要する波数域を選定し、本例についても多焦点ライン型ラマン散乱顕微鏡の使用に基づく測定高速化の達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
多焦点ライン照明型ラマン散乱顕微鏡光学系の再設計が必要となり、物品購入を次年度に繰り越したため。また、研究成果を発表した国内学会がオンライン開催となり、予定していた旅費が発生しなかったため。両者の使用計画として、次年度における光学系構築に必要な物品の購入に使用する。
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