研究課題/領域番号 |
20K15195
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
望月 健太郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50868768)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ラマン散乱顕微鏡 / 撮像高速化 / 細胞・生体組織分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、ラマン散乱顕微鏡を用いた生体試料測定において目的に応じた必要最小限のラマンスペクトル情報を探索し、その組織細胞学的な意義付けとラマンイメージング高速化への寄与を目指す。 本年度は、脂肪化早期における肝臓の組織学的状態を反映するラマンバンドの抽出と、甲状腺癌の細胞種判別に有用なラマンスペクトル情報の探索を行った。 肝臓脂肪化早期の分析では高脂肪食給餌を1-14日間施したラットの肝臓を対象に、そのホルマリン固定切片のラマンスペクトルイメージを記録および解析した結果、給餌日数に比例して肝細胞領域における脂肪滴(2,854cm-1のラマンバンドから帰属)が増加する一方で、肝類洞壁領域に分布するレチノール(1,588cm-1のラマンバンドから帰属)は徐々に消失することがわかった。従来法(HE染色切片観察)では検出困難であった脂肪化超早期(給餌1日目)における微小脂肪滴を検出可能であった点や、脂肪染色では区別が不可能であった通常脂肪滴と含レチノール脂肪滴の区別が可能であった点から、ラマン散乱顕微鏡の特性を活用した上で、脂肪化早期における肝臓の組織学的状態の一端を解明できたと考える。本研究成果については、国内外における学会発表、および論文発表を行なった。 また甲状腺癌の細胞腫判別の分析では、複数のヒト甲状腺癌細胞株につきそれぞれ60万スペクトル以上に相当するラマンスペクトルデータを取得し、各細胞腫の判別を可能とするスペクトル情報を抽出するための解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度までに、肝臓の脂肪化早期モデルの組織学的状態を反映するスペクトル情報を特定することができ、甲状腺癌細胞を判別するためのスペクトル情報についてもラマンスペクトルデータベースの取得を終え現在解析を進めている。一方で、本年度の研究項目として計画していたラマンスペクトル情報の選別により撮像高速化が可能な光学系の再構築については、研究代表者の健康上の理由により進捗が遅れたため、研究期間の延長および該当研究項目の次年度への延期を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、甲状腺癌細胞の判別において鍵となるラマンスペクトル情報の抽出、および検出対象とするラマンスペクトル情報の選別により撮像高速化が可能な光学系を構築し、生体試料のラマン散乱顕微鏡測定における撮像高速化を達成する。 生体試料として肝臓の脂肪化早期モデルおよび甲状腺癌細胞を対象に、それぞれ、早期脂肪化の検出、複数の甲状腺癌細胞の判別を試み、その測定速度と精度の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、研究代表者の健康上の理由により進捗が遅れたため、検出対象とするラマンスペクトル情報の選別により撮像高速化が可能な光学系の構築を次年度へと延期した。それに伴い、当該年度に使用を予定していた研究費の一部を次年度に繰り越ししたため、次年度使用額が生じた。
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