本研究では,単一カーボンナノチューブ(CNT)単一光子源の高効率光取り出しが可能なデバイスの開発を行った. CNTは基板と接触すると発光が大幅に減少するため,それを避けるデバイスデザインが必要となる.本年度までに,高台スペーサーを用いた架橋CNTデバイスを作製し,空気モードフォトニック結晶ナノビーム共振器とCNTからの単一光子発光を結合することに成功した.また,導波路に結合したナノビーム共振器を用いて光子の高効率取り出しを実現するために,片側の空気孔の数を減らすことで導波路方向への意図的な光の漏れを導入し,導波路端から共振器に結合した光子を高効率に取り出すことにも成功している[APL Photonicsにて報告]. また,申請時にはなかった新たな展開として,二次元材料である六方晶窒化ホウ素(hBN)をスペーサーとして用いたCNTデバイスを作製し,共振器に強く結合したCNT発光スペクトルの観測に成功した.CNTの光物性への影響が少ないhBNをCNTと共振器の間に挿入することでほとんど非輻射発光を増やすことなく集積することができる.さらにそれに必要な膜厚が20 nmと非常に小さいためCNTと共振器の距離を小さくでき,より高効率な結合が可能になった[Nat. Comm.にて報告]. 上記の研究から,二次元材料と共振器の親和性の高さに注目し,そのハイブリッドデバイスの研究も進めた.様々な二次元材料をナノビーム共振器に積載したデバイスを作製し,二次元材料の誘電率と厚さによって共振波長が精密にコントロールできることを実験と数値計算から実証した.特に,二次元材料としてWSe2を用いたデバイスでは,挿入損失をほとんど生じさせず200 nmという大きな波長シフトを達成するとともに,原子一層レベルで共振波長を再現性よくコントロールすることにも成功した[Adv. Opt. Mater.査読中].
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