研究課題/領域番号 |
20K15200
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
宮坂 泰弘 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 主任研究員(定常) (20761464)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レーザーアブレーション / 微細加工 / チタンサファイア / 寄生発振 |
研究実績の概要 |
チタンサファイア結晶における寄生発振を抑制する手法として、屈折率がチタンサファイア結晶と等しく、レーザー波長に対して吸収のある液体色素を用いた液体クラッディングが一般的に用いられている。しかし、極低温では使用できないことや色素の経年劣化の可能性、有毒で液漏れ時の復旧コストが大きいなどの課題が存在する。これらの課題を克服するために、本研究ではチタンサファイア結晶の側面に波長以下の微細構造を付与して、結晶内部で発生する自然放出光の透過率を向上させることで、寄生発振を抑制する新しい手法の開発を目的としている。 本年度は、寄生発振抑制に有効な加工条件を検討するための手掛かりを得ることを目的として、異なる波長やパルス幅のレーザーを用いてチタンサファイア結晶のダメージ閾値や加工深さを調べる実験を行った。チタンサファイア結晶のドープの濃度には大型チタンサファイア結晶を想定した0.05%以下と、小型結晶に利用される0.1%以上の濃度のものを用意した。また、結晶方位がレーザー加工特性に与える影響を調べるために、C軸に垂直なものと平行なものの2種類の結晶に関して実験を行った。照射レーザーには中心波長800nm、パルス幅30fsのチタンサファイアレーザーと、チタンサファイア結晶に吸収のある波長532nm、パルス幅300psのNd:YAGレーザーの第二高調波を用いた。照射条件とチタンサファイア結晶の種類により異なる照射痕が得られており、詳細について解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響もありチタンサファイア結晶の調達に予定よりも時間を必要としたが、実験系の構築をスムーズに行い条件の異なるチタンサファイア結晶に対して異なる照射条件で実験を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
レーザー照射条件とチタンサファイア結晶の濃度、結晶方位による実験結果に対して、レーザー顕微鏡を用いた解析を行いダメージ閾値を求める。その後、スポット照射や掃引照射、レーザー偏光特性などを組み合わせることで、表面に微細構造を形成するための照射条件を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により学会参加にかかる旅費の費用が発生しなかったことや、チタンサファイア結晶の調達に関して、研究当初よりも安価で品質の良いものを購入することができたため次年度使用額が生じた。異なる濃度のチタンサファイア基板の購入や、光学素子などの消耗品への使用を計画している。
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