自己参照方式による高感度なレーザー光位相雑音測定を実現するため、マイクロ波周波数信号の位相雑音測定システムを作製した。昨年度までの研究では、周波数信号の位相検出に用いるミキサ出力の位相感度(V/rad)の決定精度が不十分であることが課題となることがわかっていた。この課題を解決するため、基準周波数に位相同期されたマイクロ波を用いてミキサ出力の位相感度を校正する手法を開発した。また、この手法をソフトウェア部である測定プログラムにも反映させ、高精度な位相雑音測定が可能であることを確認した。以上により、本研究における測定系の立ち上げがほぼ完了した。 一方で、本研究における測定対象である高フィネス光共振器に周波数安定化された狭線幅レーザーの作製を行った。これまでのシミュレーションでは、光共振器に対する振動や音響雑音のような環境要因がレーザーの周波数雑音を劣化させていることがわかっていた。これを改善するため、光共振器を格納した真空槽を設置するための低固有振動数除振台を用意した。更に、これらを収納するための音響遮蔽箱を設計・調達し、実験設備の大幅な配置変更を行った。その後、レーザー稼働に必要な配線を行い、本研究におけるレーザーシステムがほぼ完成した。 研究期間全体を通じては、遅延自己ヘテロダイン法によるレーザーの周波数雑音測定、及び高精度な位相雑音測定によるレーザーの性能評価を達成しており、それぞれに関連する論文を出版した。今後の展開としては、これらを融合させた自己参照方式超高感度レーザー光位相雑音測定を実現することである。
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