研究実績の概要 |
核燃料再処理に伴い発生する高レベル放射性廃液には、排ガス用触媒等として需要が高く、高価な希少金属であるロジウム(Rh)が含まれており、これを分離回収して資源化することが期待されている。しかし、硝酸水溶液中のRhは従来のような有機層中への抽出や吸着材への吸着は長時間に及ぶため、選択的かつ迅速な分離法は確立されていない。そこで本研究では、水と相分離しつつも系内に水を許容できる分離媒体として高吸水性ゲルを用い、その一部にRhに親和性の高い構造を組み込むことで選択性を発現させることを着想した。 まず、Rhを含む白金族元素に親和性の高いチオジグリコールアミド(TDGA)構造を有する架橋性モノマーを用いて合成した高吸水性ゲルについて、白金族元素(Ru, Rh, Pd)を含む硝酸水溶液と接触させ、吸着性を有することを確認した。一方、当該架橋性モノマーを用いると、まずその合成における不純物が多い、単位体積当たりの吸着量が少ない、機械的強度が低い等の課題が見られた。そこで無水チオジグリコール酸をもとに不純物の比較的少ないチオジグリコールアミド酸(TDGAA)型モノマーを合成し、これと架橋性のアクリルアミド誘導体を用いてゲルを合成した。TDGAA型モノマーだけでは重合しにくいためアクリル酸を添加して合成を行ったが白金族元素の吸着性を有することが確認できた。 これを用いてバッチ法により吸着特性を取得し、硝酸水溶液中においてRu, Rh及びPdに対し吸着性を有することが判明した。硝酸濃度が低い方が白金族元素の吸着に有利であり、選択性はPd>Ru>Rhの順になることが判明した。また、室温において24時間の接触後に40%以上のRh(Ⅲ)が吸着することが判明し、TDGA型抽出剤含浸吸着材よりもRhの吸着が早い可能性が示唆された。
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