研究実績の概要 |
過酷事故を生じた原子炉の廃止措置を推進する上で、燃料棒や制御棒、構造材料などの原子炉材料が溶融固化した“燃料デブリ”に関する研究を進めることは重要である。本研究テーマでは、ステンレス鋼、炭化ホウ素(B4C)、金属ジルコニウムを主成分とする「金属系燃料デブリ」中の高濃度ホウ素に着目した研究を実施した。最終年度となる2022年度は、これまでに得られた成果をまとめ、当初の目的であった、金属系燃料デブリに適用可能な汎用ホウ素濃度定量法について検討した。 ステンレス鋼と炭化ホウ素からなる高温融体(SS-B4C融体)が冷却して生成した凝固物は、γ-Fe相と(Cr,Fe)2B相から構成されることがわかり、また、当該生成物は一般的な酸(塩酸、硝酸、硫酸、リン酸)のみを用いて溶液化可能なことがわかった。一方でSS-B4C融体と金属ジルコニウムの反応では、酸に不溶なホウ化物を形成することが示唆された。 汎用的な分析手法としてICP-OESを例に、そのホウ素分析精度を即発ガンマ線分析を用いて評価したところ、酸に可溶な試料であれば、非常に高い精度(具体的には試料のばらつきに起因する不確かさの範囲内)でホウ素濃度を定量可能なことがわかった。一方でアルカリ融解などの手法が必要な場合、その分析精度が悪くなる(試料のばらつきに起因する不確かさの範囲外)ということが実験的に明らかとなった。 未だ燃料デブリの正体は明らかとなっていないが、その性状が本研究で想定していた試料と近ければ、本研究で提案した手法を適用することで、金属系燃料デブリ中のホウ素濃度を、汎用的な分析手法を用いて定量できる可能性を示唆することができた。
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