研究課題/領域番号 |
20K15210
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
金子 政志 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (50781697)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 白金族元素 / 密度汎関数法 / 安定度定数 / 配位結合 |
研究実績の概要 |
2021年度は、初年度に検討した計算手法を用いて高レベル放射性廃液中に存在するルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)の錯体種及び錯生成反応のモデリングを行うとともに、初年度に行ったイリジウムメスバウアーパラメータを用いた密度汎関数法のベンチマーク研究について、論文出版を行った。 Ru錯体は、正八面体型のルテニウムニトロシル錯体、Pd錯体は、平面四角形型の錯体に対し、高レベル放射性廃液中に存在する硝酸イオン、亜硝酸イオンの配位を考慮して錯体モデリングを行った。硝酸イオンとの錯生成反応について、計算によって得られたエンタルピー差と既報の安定度定数との相関を用いて、金属イオン-硝酸イオン-亜硝酸イオンの三元錯体の安定度定数を予測し、錯体種のスペシエーションを行った。その結果、Pd錯体は亜硝酸イオンとの反応性が高く、紫外可視吸収スペクトルの予測値と既報の実測値はよく一致することが分かった。また、Ru錯体はPd錯体に比べ、亜硝酸イオンとの反応性が低く、廃液中では亜硝酸イオンの配位はほとんど起こらないことが示唆された。 また、白金族元素と抽出剤との錯生成反応モデルについても検討を開始し、酸素・窒素・硫黄原子をドナーとして持つジアミド型配位子とのPd錯体をモデル化し、IR及びUV-Vis分光等の実験値と比較を行いながら、検討を進めている。 以上より、密度汎関数法に基づく解析により、高レベル放射性廃液中に存在する白金族錯体の構造や安定性について予測・評価する方法を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、当初計画通りに高レベル放射性廃液中に存在する硝酸イオン及び亜硝酸イオンとの白金族錯体の錯体構造及び錯生成反応を予測するための方法を得ることができ、この研究成果は、査読付き論文としての出版を準備している。 また、初年度に得られた研究成果については、2021年度に査読付き論文として出版することができたことから、おおむね順調に進展している。と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、密度汎関数法を用いて白金族元素の溶媒抽出反応モデルについて検討し、抽出剤や逆抽出剤との白金族元素の錯体構造及び錯生成反応について予測する計算手法を開発するとともに、白金族元素が配位型抽出と会合型抽出のどちらで起こるかを予測する手法についての検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、学会発表や研究打合せが集合(対面)形式からWeb会議形式に変更となったことにより、出張に係る費用の支出が当初計画に比べて、少なかったことから次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、2022年度分研究費と合わせて、ソフトウェアライセンス更新に係る費用として使用する。
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