研究課題/領域番号 |
20K15213
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
田辺 鴻典 科学警察研究所, 法科学第二部, 研究員 (60822070)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核物質 / 中性子 / 放射線計測 / チェレンコフ検出器 / 核セキュリティ |
研究実績の概要 |
本研究ではアクティブ中性子法用の中性子検出器として、新たに水チェレンコフ検出器(WCD:Water Cherenkov Detector)の開発を行うことで、非常に低コストかつ可搬性のある核物質非破壊測定システムの実現を目指す。WCDにおいては中性子とガンマ線の弁別が課題となるが、水に塩化ガドリニウムを溶解させ、中性子起因の発光量を増加させることで両者の弁別を狙う。 本年度はアクティブ中性子法の1つである回転照射法へのWCDの適用性について、シミュレーション(PHITSコード)による検証を行った。対象核物質としては天然ウランを想定し、核物質の周囲にモデレーターとしてポリエチレンブロックを設置した体系において検知可否を検証した。結果として、単純に従来検出器(He-3計数管)をWCDに置き換えるだけでは、核物質の検知が困難であることを確認した。しかし、ガンマ線の混入を1/10程度まで低減することで、核物質の検知が実現可能であることも示された。また、プロトタイプ検出器製作のため、検出器を構成する各要素(反射材、光電子増倍管、塩化ガドリニウム濃度)について、実験による最適化を行った。反射材については4種類、光電子増倍管については3種類を比較検討した。さらに、3種類の波長変換剤について効果を検証した。実験の結果、塩化ガドリニウムの添加により、中性子起因の発光量のみが増加することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は回転照射法へのWCDの適用性について、シミュレーションによる検証を行った。また、プロトタイプ検出器製作のため、検出器を構成する各要素(反射材、光電子増倍管、塩化ガドリニウム濃度)について、実験による最適化を行った。さらに、波長変換剤の効果についても検証した。COVID-19により実験日程に遅延が生じたが、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は昨年度の実験結果に基づき、プロトタイプ検出器の製作を行う。また、様々な条件(核物質の種類や量、遮蔽体の有無等)について、シミュレーションにより検知可否の検証を行う。さらに、アクティブ中性子法装置と組み合わせ、核物質を用いた実証実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により実験日程が遅延し、備品の購入も遅れたため、次年度、実験用備品の購入に充てる。
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