研究課題/領域番号 |
20K15219
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石塚 師也 京都大学, 工学研究科, 助教 (90756470)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ベイズ推定 / 空隙率 / 応力 / 地熱開発 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
ベイズの理論を基に地下で測定された歪みデータから3次元の応力とその方向を推定する手法を開発した。この手法は、応力・歪みの関係式を基に応力を推定する方法であるが、推定したいパラメータの取り得る範囲を確率分布として組み入れることができ、さらに推定したパラメータの不確実性を確率分布として得ることができる点に利点がある。開発した手法は、疑似データを用いて誤差評価を行い、十分な精度で推定できることを示した。また、実際に取得された歪みデータに適用を行い、推定した応力が他の手法で推定された値と整合的となることを示した。 また、ベイズ推定を用いて、地表での電磁波観測データから空間的に得られた比抵抗と掘削坑井で得られた温度データから地下深部の空隙率および塩濃度を推定する手法を開発した。この手法では、比抵抗の岩石物理モデルを用いて、ベイズ推定によって、推定したパラメータを得る。ただし、推定したいパラメータ数が観測値の数よりも多い問題となるため、深さ方向および空間方向のパラメータの相関を先験情報として用いることで、推定可能とした。疑似データに適用したところ、数パーセントの誤差でこれらの値を推定できることが分かった。開発した手法は、葛根田地域で得られたデータの2次元断面図に適用し、地下5000 mまでの物性分布を推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベイズ推定を用いる手法を開発することによって、推定するパラメータの最適値のみならず、不確実性までも評価できるようになった。また、応力―歪みの関係式や比抵抗―空隙率・塩濃度・温度との物理的な関係式を導入することで、物理的な背景をもった値が推定できるようになった。ニューラルネットワークを用いた先行研究の課題は、物理的な理論を考慮できなかったため、先行研究の手法とは異なる特徴をもった手法を提案することができた。このようなことから、研究は計画通りに進んでいると考える。このプロジェクトでは、複数の手法を開発し、比較することを目指しており、別の手法開発については今後進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、昨年度に開発した手法と対比するため、深層ニューラルネットワークに物理的な関係式を学習させる手法の開発を検討する。物理的な関係式を深層ニューラルネットワークに学習させることで、異なる特徴をもつ手法になると考えられる。また、開発した手法は疑似データに適用して誤差を評価するとともに、実フィールドのデータへの適用も進めたい。また、観測データと推定したいパラメータの関係式である岩石物理モデル自体の不確実性の評価もすすめていく。まずは、いくつかの手元にある岩石コアを画像化し、数値シミュレーションによって岩石物性を計算できるようにすることで、岩石物理モデルの不確実性を評価するための足掛かりを作りたい。
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