研究課題
前年度から開発を行っているベイズ統計学を基にした地下の状態・物性分布推定手法の精度および特徴の検証を行った。まず、数値シミュレーションデータを基に疑似的な観測データを作成した。マグネトテルリク法によって得られる比抵抗分布は、空間的に平滑化された値が推定されるため、物性や状態の空間分布に境界がある場合には精度よく推定することが難しいが、このような境界以外の場所では概ね良好な精度で推定できることを確認した。また、実際の地熱地域で得られたデータに適用し、地下深部の空隙率と塩濃度の分布を推定した。解析範囲の一部に空隙率が高い箇所を推定した。この周囲よりも高い空隙率の領域は貫入岩の位置と整合しており、地質学的なデータとは矛盾しなかった。また、深層ニューラルネットワークを用いた物性分布推定手法を開発し、疑似データに適用した。岩石コアのX線CTデータか岩石物性を推定する手法として、デジタル岩石物理モデルの構築技術の開発を行った。特に、X線CTデータから鉱物部分と空隙部分にセグメントする処理で不確実性が高かったことから、セグメント処理を用いずに岩石物性を推定する手法を検討した。本手法を用いて、砂岩の弾性波速度の推定を行い、実験で得られた値と整合的であることを示した。本手法は、実験室での計測用の岩石の整形が難しい場合や手間のかかる場合であっても、岩石物性データを取得できる点で有効である。そのため、上述したベイズ統計学を用いた物性の空間分布を推定する手法を適用する際にも、より多くの物性データを基に推定できるようになると考えている。
2: おおむね順調に進展している
今年度の研究によって、開発したベイズ統計学を基にした手法の特徴についてより詳細な知見を得ることができた。特に疑似データへの適用では、本手法で精度よく物性・状態を推定できる条件を整理することができた。また、実際の地熱地域のデータへの適用では、対象地域の地下構造・状態に対して新しい知見を得ることができ、開発した手法の有効性を示すことができたと考えている。また、岩石物性を得る手法として、新しいデジタルロックの構築手法を検討し、様々な空隙径分布を有する砂岩に対して有効性を示すことができた。そのため、研究は概ね順調に進んでいると考えている。
これまで開発した手法と対比する手法として、深層ニューラルネットワークを用いた手法の開発および特徴の検証を進める。まず、疑似データに対して、手法を適用し、手法の特徴を明らかにする。続いて、実データへの適用を行い、手法の利点・限界を示すことで、開発した手法の有効性を検討する。また開発したデジタルロック作成手法を用いて、熱伝導率等、他の岩石物性への応用を検討する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
材料
巻: 71 ページ: 235-242
10.2472/jsms.71.235
Natural Resources Research
巻: 30 ページ: 3289-3314
10.1007/s11053-021-09874-w
Earth Science Informatics
巻: 15 ページ: 73-87
10.1007/s12145-021-00694-3