開水路で発電する水車として,回転軸を水平に寝かしたサボニウス形水車の開発を行った. サボニウス形は2枚の半円弧状ブレードを互い違いに配置した構造であり,ブレードの抗力差により回転する.従来サボニウス形は風車や海洋水車として,研究・開発がされてきた. 初年度は水車の自由表面からの距離が水車出力に与える影響を調査し,水位などの水流状況ごとに好適な水車設置高さ存在し,特に水車ランナの回転方向が水車性能に強く影響を及ぼすことを明らかにした.流れの方向と同じ向きに動くブレードを“進みブレード”,流れとは逆方向に動くブレードを“戻りブレード”と定義すると,進みブレードが自由表面に近い回転方向の運転条件のとき,水車設置高さが自由表面から水車直径の20%ほどの距離にある時最大の出力係数を得る.その逆回転の運転条件のとき,流路底面に水車ランナが近いほど,高い出力係数を得ることを明らかにした. 過去の風車の研究により,抗力型に分類されるサボニウス形ランナも一部揚力による作用でトルクが発生することが知られている.コアンダ効果により,進みブレード凸面側を流体が沿って流れ(付着流),その流れが増速することで揚力を発生する.また,進みブレードを沿った流れは戻りブレード凹面側へ流れこみ(巻込流)ブレード凹面側の圧力を高め,回転トルクに寄与する.本年度は,付着流や巻込流のようなサボニウス形ランナ特有の流れ場をPIV計測により取得し,水車設置高さがトルク特性に違いをもたらすメカニズムを検討した.水車トルクには自由表面流れが大きく影響を及ぼし,自由表面の変形で水車ランナを越流する流れが進みブレード凸面の付着流のはく離を遅らせる効果と,増速しブレード表面圧力を低下させる効果により,トルク増大につながることを明らかにした.
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