研究課題/領域番号 |
20K15221
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
永岡 章 宮崎大学, 工学部, 准教授 (70784271)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 熱電変換材料 / バルク単結晶成長 / 多元系化合物 / 粒界 / 異相 |
研究実績の概要 |
近年、データを活用する超スマート社会の実現に向けてIoT機器の爆発的な増加が予想されており、これらの機器に電力を供給する小型独立電源の開発が求められている。身の回りの数十度から製鉄所における数百度といった様々な環境下に存在する熱による温度差を利用する熱電発電は、独立発電技術として期待されている。しかし、これまでの熱電材料は、希少元素や毒性元素が含まれており、環境中の温度差を利用した自立電源として大規模な普及を目指すためには、低コストかつ環境調和した熱電発電デバイス開発が望まれる。デバイス開発の一つの指標として、無次元性能指数ZT >1が挙げられるが、電気的特性と熱電特性はトレードオフの関係であるため最適化が困難であり、条件を満たす熱電材料は限られている。 本研究ではこれまで開発した「無次元性能指数ZT > 1を示す多元系熱電単結晶材料の更なる熱電特性向上」を目的とする。多元系単結晶材料の高い電気的特性且つ低い熱伝導率の最適化のために、電荷的に中性な粒界や異相界面の様なエネルギー的に安定な機能性界面を調査する。粒径がミリオーダー以下の従来の多結晶焼結体では界面の評価は難しく、単結晶中に界面を形成する事で大きなスケールでの評価によって、最適な材料の組合せと詳細な知見が明らかになる。特に「熱電特性向上のために母体材料中でどの界面や粒界が効果的なのか?」という今まで不明瞭だった情報を詳細に解明し、熱電特性向上へ寄与する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cu2ZnSnS4やCuSbS2母体化合物を作製し、結晶内部に目的とする異相や粒界を形成に成功した。母体材料内部に異相を導入する場合には、母体材料の融点以上で異相と合金化、もしくはCu2ZnSnS4と異相との共析反応を用いた。様々な粒界を作製するために、結晶成長中の冷却速度を100℃/hすることで制御した。 電子顕微鏡(SEM)を用いて異相組織の観察、電子後方散乱回折法(EBSD)を用いて粒界のΣ値の決定した。電気的特性は界面間に電極を形成し、ホール効果測定からキャリア伝導と散乱メカニズムを評価することで、Cu2ZnSnS4中のΣ3粒界は電気的に中性であることを明らかにした。このことからΣ3粒界は低熱伝導率と高電気的特性に有効である知見を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに作製された異相界面を有する試料のバンド不連続量をX線光電子分光法(XPS)から情報を収集し、界面の形状と界面におけるキャリア移動の度合いを判断する。そこから最適な構造材料を決定し、知見の裏付けをとる。 熱電特性については、様々な界面を含むサンプルのゼーベック係数と熱伝導率を測定し、熱電特性に有効な界面を選別する。
|