研究課題/領域番号 |
20K15226
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 駿介 東京大学, 物性研究所, 助教 (10822744)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | THz pump-SHG probe / Pt(111) |
研究実績の概要 |
2021年度は、2020年度測定に成功した、金属表面でのモノサイクルTHz光による第二高調波光変調を解明することを目的とし、モノサイクルTHz光と基本波光の偏光を変えてTHz pump-SHG probe測定を行った。 モノサイクルTHz光、基本波光の偏光がともにP偏光の時に、第二高調波光の強度変調が大きいことが分かった。このことは、THz光の金属基板垂直方向の成分が観測結果に寄与していることを示唆している。このことから、THz光によって金属表面の電子が基板垂直方向に沿って揺さぶられているダイナミクスを実時間で観測していると考えている。 金属表面の電子移動は、様々な表面化学反応のトリガーとなるため、THz光による表面化学反応につながる重要な結果であると考えている。 2022年度は、実験結果をよく説明できるモデルを立て、THz光に対する金属表面の電子と吸着種の応答について明らかにする。
さらに、2021年度はモノサイクルTHz光による表面化学反応の探索を始めた。O2/Pt表面からのO2脱離やCO+O/Pt表面でのCO2生成反応などを主な対象とした。800nmの超短パルス光によるO2脱離やCO2生成などの現象は先行研究通りに観測することができた。一方、モノサイクルTHz光のみでは有意な表面反応(O2脱離やCO2生成)は観測されなかった。THz電場の高強度化や反応検出の工夫が2022年度の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、モノサイクルTHz光に対する金属表面の電子の応答を第二高調波発生を用いて観測する実験を行えている。実験結果の解釈に必要な追加実験も行えたため、THz光に対する表面電子の応答を説明することで学術論文として報告する段階にある。 さらに、モノサイクルTHz光による表面化学反応の探索の実験を開始しており、2022年度は様々な工夫をしてモノサイクルTHz光誘起表面化学反応を観測できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
モノサイクルTHz光による表面化学反応を探索をできる段階まで実験準備を進めることができたため、2022年度はモノサイクルTHz光誘起表面反応を観測することが最大の目的である。 そのために、三つの準備を進める計画である。まず、THz光自体の高強度化である。これはモノサイクルTHzではなくなるが、二つの近赤外光の差周波過程によるTHz発生方法などを考えている。二つ目は、検出方法の高感度化である。現在反応検出に用いている四重極型質量分析器の感度等は、環境圧力に依存する。そのため、四重極型質量分析器の環境圧力を局所的によくすることで検出感度向上をはかる。最後に、新たな検出方法として和周波発生を取り入れる。和周波発生による検出はTHz光が照射されている場所と同じ場所にある分子を検出できるため、これまでの四重極型質量分析器による検出に比べて、より直接的な表面化学反応の検出が可能になると期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費として支出する予定であった予算が、コロナ禍でのオンライン学会になったため必要なくなったため次年度に繰り越すことにした。また、2022年度の実験でも新たに必要な物品があるので、それらを購入する予算として使用する計画である。
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