研究課題/領域番号 |
20K15230
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西本 佳央 京都大学, 理学研究科, 助教 (20756811)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 解析的エネルギー微分 |
研究実績の概要 |
本研究では、研究期間全体で多参照摂動理論のエネルギー勾配の実現や、円錐交差の探索を可能にすることを目的としていた。これらの理論開発を初年度と次年度に行い、最終年度に開発した手法を用いて応用計算を行う計画としていた。 今年度は、完全活性空間を用いた二次の摂動理論(CASPT2)と、その制限活性空間を用いた手法(RASPT2)の解析的エネルギー微分の式を導出し、その式をOpenMolcasと呼ばれる量子化学計算パッケージに実装した。従来の多参照摂動理論のエネルギー勾配は、完全活性空間として12電子12軌道の活性空間までしか用いることができなかった。これは、大きな完全活性空間を表現するのに必要な行列式または配置状態関数の数が膨大になるからである。そこで本研究では、制限活性空間を用いることにより20電子20軌道の活性空間を用いた解析的エネルギー微分を可能にした。従来の解析的微分の理論と同様に、本研究でのプログラムもラグランジ法やZ-vector法を用いている。また、密度フィッティングやレベルシフトの手法もサポートする実装となっており、応用計算を行うのに便利な機能もサポートされている。 RASPT2を用いてCASPT2の結果をよく再現するためにはある程度きちんとした活性空間を定義する必要があることが分かった。また、本研究で開発した手法を用いてジベンゾペンタレン誘導体の一重項三重項ギャップの計算を行い、摂動理論を用いない結果と比較して約5 kcal/molの差があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
元々は別の多参照摂動理論(NEVPT2)を用いた理論開発を行う予定だったが、既に実現してしまったこともあり別の理論・プログラムにて類似の実装を行うことになった。円錐交差の探索を実現するにはさらに1ステップが必要となるものの、それでも当初の予定通り次年度にて実現できる可能性が高い。このためおおむね順調に進展していると言って良い。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の予定通り、多状態での多参照摂動理論のエネルギー勾配や非断熱カップリングの計算を行うことができるようにする。研究代表者は過去に類似の理論開発を行ってしまったため、その時のアプローチに従って進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
手持ちの計算機のみでも思ったよりも計算できたことと、コロナ禍で学会参加などができなかったことが理由として挙げられる。翌年度以降はより計算リソースが必要な計算を行い、また状況次第であるが学会参加などをしていきたい。
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