分子内で起こる励起状態は非常に多岐に渡るが、光化学ではこれらの一部が重要な役割を果たす。本研究では光化学プロセスで必要な状態のみを直接的に高精度計算することによって対象とする化学的描像をクリアにし、さらにこれらを基底として用いた有効ハミルトニアンを対角化することで、複雑な励起状態を断熱状態として記述する手法を開発した。特に、電子スピンを正確に取扱う理論を構築することによって、スピン混入した非物理的な状態を取り除き、実験との対応関係が明確になるように工夫した。本研究では、これらを発展させ、量子コンピュータを用いた励起状態計算アルゴリズムの開発も行い、量子計算機の光化学分野応用への基盤を整えた。
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