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2021 年度 実施状況報告書

量子もつれ光を用いた新規蛍光寿命測定法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K15237
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

松崎 維信  国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70830165)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード量子もつれ光 / 蛍光寿命 / イメージング
研究実績の概要

前年度は量子もつれ光を用いた新しい測定原理に基づく蛍光寿命測定法の原理検証実験を行ったが、今年度はそれを蛍光寿命イメージング法(FLIM)へと拡張した。この手法を実現するために、まずは蛍光顕微鏡の自作を行った。顕微鏡に導入された励起光は、ダイクロイックミラーを透過した後、対物レンズにより試料中に集光される。試料はピエゾステージ上に乗せてあり、ナノメートル精度で位置をコンピューター制御可能である。試料が励起光を吸収することによって生じた蛍光は同じ対物レンズにより集光され、前記のダイクロイックミラーで反射されることで励起光から分離される。分離された蛍光中に残存する励起光をロングパスフィルターにより完全に除去した後、アバランシェフォトダイオード(APD)に集光し検出することで、蛍光測定が行われる。
試料に照射する励起光としては、532 nmにおける量子もつれ光を用いた。この励起光は前年度の原理検証実験で用いたものと基本的に同じものだが、試料位置における集光サイズをなるべく小さくするために、量子もつれ光を発生させるための自発パラメトリック下方変換(SPDC)の光学配置の最適化を行った。その結果、試料位置での集光サイズは1マイクロメートル程度となった。これが今回開発した、量子もつれ光を光源とする蛍光顕微鏡の現時点での空間分解能である。
開発した装置の動作確認を行うために、一部をマスキングしたカバーガラス上にローダミン6G溶液を滴下し、溶液の存在する部分と存在しない部分の境界付近の蛍光測定を行った。試料をピエゾステージによって移動させつつ各点において蛍光強度および蛍光寿命の測定を行ったところ、得られた蛍光強度イメージでも蛍光寿命イメージでも溶液の境界を可視化することができた。即ち、cwレーザー由来の量子もつれ光を光源として用いる本手法でも、蛍光寿命イメージングが行えることを実証した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度の目標は、量子もつれ光を励起光とした新しい蛍光寿命イメージング装置を開発すること、および本研究で実現した新規蛍光寿命測定法とパルスレーザーを用いた従来法の比較を実験的に行うことであった。前者の装置開発については、研究実績の概要に記入した通り予定通りに行うことができた。一方、従来法との実験的な比較は行うことができなかったため、これに関しては当初の予定から遅れている。

今後の研究の推進方策

蛍光寿命の測定を行うための光源としてはこれまでパルスレーザーが一般的に用いられてきた。パルスレーザーは高い尖頭出力を持っているため、通常の蛍光以外に、様々な非線形光学現象が重畳して観測されてしまう場合がある。例えば、多光子励起により生じる蛍光や、多光子吸収に由来する色素分子の光退色などが挙げられる。一方、本研究で開発したcwレーザー由来の量子もつれ光を用いる蛍光寿命測定法では、励起光の尖頭出力を非常に低く保つことができるため、これらの非線形光学現象を回避しつつ蛍光寿命測定を行うことができると期待される。そこで次年度は、量子もつれ光を用いた蛍光寿命測定とパルスレーザーを用いた蛍光寿命測定を同じ条件下で行い、両者の測定結果にどのような差異が見られるか実験的な検証を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

現在までの進捗状況に記載したように、本研究で開発した手法と従来法の実験的な比較については本年度中に行うことができなかった。この研究予定の遅延が、次年度使用額が生じた理由である。次年度はこの研究費を用いることで、当初は本年度に実施することを予定していた、本研究で開発した手法と従来法の実験的な比較を行う予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Superresolution concentration measurement realized by sub-shot-noise absorption spectroscopy2022

    • 著者名/発表者名
      Korenobu Matsuzaki, Tahei Tahara
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 ページ: 953

    • DOI

      10.1038/s41467-022-28617-w

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 量子もつれ光を用いた超高感度吸収分光法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      松﨑維信、田原太平
    • 学会等名
      第15回分子科学討論会

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公開日: 2022-12-28  

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