研究課題/領域番号 |
20K15239
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松野 太輔 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80749143)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分子ベアリング / 固体内回転 / 筒状分子 / 動的挙動 |
研究実績の概要 |
本研究は,「炭化水素分子ベアリングの固体内テラヘルツ回転と物性開拓」と題し,固体内における分子の超高速回転と,それによりもたらされる特異な物性や機能を明らかにすることを目指すものである.一般に固体内における分子運動は周囲の分子との接触のため大きく制約を受けるが,申請者らが開発した筒状分子とゲスト回転子からなる「分子ベアリング」のシステムではこの問題が解決される.本研究では,従来のものよりさらに高速の回転が可能となる新しい分子ベアリングを開発し,過去に報告例のない「固体内テラヘルツ回転」を実現し,固体材料としての機能・物性を開拓する.本研究は,検討内容を以下の三項目に分け,段階的に遂行する計画であった.すなわち,[項目1] "会合体構築と分子構造" [項目2] "固体内回転運動",[項目3] "固体物性開拓"の三項目である.2020年度には,上記項目1を主に進め,今後研究対象となる新たな分子ベアリングを構築し,その分子構造を明らかにした.また,項目2にも取り掛かり,この分子ベアリングが固体内において超高速回転を示しうることを示すことに成功した.現在,この成果を原著論文としてまとめるべく検討を進めている.また関連する成果として,興味深い動的挙動を示す同軸型分子ベアリングの開発にも成功し,これをNature Communications誌に報告した.また,新たな大環状芳香族分子の合成と立体化学についての成果をChemistry Letters誌に報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,今回新たに合成した分子ベアリングの動的挙動の解明は2021年度半ばごろとなることを想定していたが,現時点でほぼ解析が完了している.そのため,2021年度には,物性と機能性を解析する[項目3]に,当初予定していた以上に注力することが可能となる見込みである.さらに,関連する成果をNature Communications誌を始めとする論文誌に発表することができた.これらのことより,「当初の計画以上に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にある[項目1] "会合体構築と分子構造" [項目2] "固体内回転運動",[項目3] "固体物性開拓"の三項目のうち,項目1は完了し,項目2についても大部分が完了している.2021年度は,項目3に注力して研究を進めていく予定である.まずは項目1において確立した合成法に基づき分子ベアリングの大量合成を行い,粉末状態や結晶状態における物性を,特に固体内分子運動との関連から解明することを目指す計画とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも,主として物品費の支出が少なくなっているが,当初の想定よりも順調に固体内動的挙動の解明が進み,化合物の合成量が少なく済んだためである.次年度以降,機能開発の検討には化合物の大量合成が必要となる.次年度使用額は主として有機合成実験に必要となる試薬・物品費として使用する予定である.
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