研究実績の概要 |
本研究課題では、アニオン分子とウレア基が水素結合を形成することでウレア基の窒素原子の電子状態が変化することに着目し、この現象を利用することで分子の発光特性を制御するという考えに基づき研究を進めている。蛍光性ウレア化合物とアセテート分子との水素結合錯体が凝集誘起発光を示すことは研究準備段階で突き止めていた。今回は、そのメカニズムを解明するため、実験と計算科学の両面から検討を行い、その結果をまとめ論文発表した。 続いて、本手法で用いるアニオン分子にキラリティーを持つアニオンを用いることで、円偏光発光を示す分子を開発できるのではと考え、更なる検討を行った。まず、キラルなカルボン酸塩の合成を試みた。テトラブチルアンモニウムを対カチオンとするキラルなカルボン酸塩については1H NMRにより生成を確認した。また、蛍光性を示す分子骨格として、[6]ヘリセンの部分構造である1,8-ジフェニルナフタレン構造を用いている。この分子におけるらせん反転に必要なエネルギーを調整するため、ナフタレンの1位と8位のフェニル基に置換基の導入を試みた。まず、比較的立体障害の少ないメチル基を有する化合物の合成を検討した。しかし、通常の合成条件では目的の化合物の生成は確認できなかった。今後、傘高い置換基が導入可能な反応条件を検討する予定である。
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