プロトン移動現象は近年、強誘電体や発光材料、スイッチング材料など様々な機能性物質の開発に応用されており、固体中における新たなプロトン移動現象の開拓とその理解はプロトン移動現象に基づく機能性材料の開発において重要である。本研究ではプロトン移動とスピン転移が連動して発現する現象(プロトン結合スピン転移現象)を示す鉄二価錯体を基盤に、固体中における新規プロトン移動現象の開拓を行った。多段階スピン転移を示す鉄錯体を新たに開発し、構造の変化を単結晶X線回折測定により観測した結果、この錯体が結晶レベルでの多段階プロトン移動およびプロトン化状態の熱双安定という新たな挙動を示すことを明らかにした。
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