研究課題
両親媒性ロフィンダイマー(3TEG-LPD)のミセル構造を光照射により高速で変化させ、可溶化されたモデル薬物の放出制御を高速で成し遂げることを目的に本研究を実施した。2020年度は、両親媒性ロフィンダイマーが形成するミセル構造の解析と光照射にともなうその時間変化の追跡を目的として、小角中性子散乱(SANS)装置に光照射ランプと紫外・可視(UV/vis)吸収分光光度計をドッキングさせたin situ計測システムを用いた評価を遂行した。解析の結果、紫外光照射ON-OFFにともない3TEG-LPDミセルが迅速かつ可逆的に伸縮することが明らかとなった。さらに、モデル薬物であるカルセインの秒オーダーでの速やかな放出が確認された。2021年度は、UV/vis測定からロフィンダイマーのフォトクロミック反応、SANS測定からミセル構造変化、蛍光測定からカルセインの可溶化・放出挙動について、紫外光照射過程におけるそれぞれのダイナミクスを検証した。結果として、紫外光照射にともなう僅かなミセル構造の変化で、速やかにミセル内部のカルセインが放出されることを明らかにした。最終年である2022年度は、モデル薬物として、親水性であるカルセインならびに疎水性であるナイルレッドの放出挙動を比較した。モデル薬物の親水性・疎水性に関わらず、紫外光照射にともなう速やかな放出と照射停止時の再内包が観測された。一方、再内包の効率に着目すると、ナイルレッドでは99%、カルセインでは83%であった。疎水性のナイルレッドはミセル内部の環境を好み、より効率的に再内包されたと考える。さらに、親水基として直鎖状のエチレングリコール鎖を導入した両親媒性ロフィンダイマー(PEG8-LPD)では、同様に紫外光照射にともなう速やかな放出が観測された一方、照射停止時の再内包がほとんど観測されなかった。これより、親水基を構成するエチレングリコール鎖の密度や配向がモデル薬物の放出挙動に大きく影響することを見出した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://researchers.adm.tottori-u.ac.jp/html/100002464_ja.html