研究課題/領域番号 |
20K15252
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
相澤 直矢 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (60754918)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 励起状態 / 項間交差 / 熱活性化遅延蛍光 / スピンー軌道相互作用 / 構造最適化 |
研究実績の概要 |
安価・軽量・フレキシブル・プリンタブル・希少金属フリーといった利点を有する有機半導体材料の開発は、有機ELをはじめとする次世代の電子デバイスの根幹を担う重要な課題であり、世界中の研究者が優れた分子設計指針と特性を求めて、日夜しのぎを削っている。材料開発のさらなる加速に向けて、理論計算化学が先導する新材料の発見に期待が高まっている。 本研究では「三重項から一重項励起状態への逆項間交差をナノ秒オーダーで引き起こす熱活性化遅延蛍光(TADF)材料の創出」を目的とした。そのために 、①一重項および三重項励起状態のポテンシャルエネルギー面が交差する構造(両励起状態のエネルギーが等しく、逆項間交差が最も起こりやすい構造)の最適化計算を行った。次いで、②最適化した交差構造において、有機材料の弱いスピンー軌道相互作用を考慮した時間依存密度汎関数(TDDFT)法により、逆項間交差の速度定数を算出し、新規材料の理論設計を行った。さらに、③設計した材料を合成し、光物性評価を評価したところ、合成した材料がサブマイクロ秒のTADFを示すことを明らかにした。また、レート方程式を用いた発光減衰の解析の結果、逆項間交差は数ナノ秒に到達していることがわかった。次年度では、合成したTADF材料を発光層に用いた多積層型有機ELデバイスを作製する。発光波長やHOMO、LUMO準位を考慮して、材料のポテンシャルを最大限に引きす出すデバイス構造を適用し、デバイス特性を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ナノ秒オーダーの逆項間交差を示す新規材料の理論設計と合成に成功した。研究期間内に全ての計画を円滑に遂行できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展しているため、当初の計画通り研究を推進する。合成した材料を用いた有機ELデバイスを作製し、特性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、実験研究を予定通り行えなかったため。次年度に物品費としての使用を計画している。
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