研究課題/領域番号 |
20K15255
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山科 雅裕 東京工業大学, 理学院, 助教 (80847153)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蛍光性 / 分子ピンセット / ホストーゲスト / 超分子ポリマー |
研究実績の概要 |
本研究では、アントラセン環とジインで構成されたダブルピンセット型分子の機能開拓に取り組み、分子包接に立脚した低分子と高分子系の蛍光材料の開発を目的とする。これまで様々な分子ピンセットが報告されてきたが、『蛍光性』と『2つの分子包接部位』を併せ持つ分子ピンセットはほとんど例が無い。本研究では、アントラセン環を柔軟なジインで連結した蛍光性ダブルピンセット型分子に着目し、その分子間相互作用に起因した特異蛍光性と、包接錯体形成の様式の差を活用した、新規超分子蛍光材料の開発を目指す。本年度は、1.アントラセン環をアセチレンで連結した大環状2量体の高効率合成、2.アントラセン環を基盤とした分子ピンセットの合成に関して取り組んだ。具体的な成果としては、1に関して、パラジウムとバックワルドホスフィン配位子の組み合わせを検討し、鍵パネル分子となるアントラセン環に2つのアセチレンユニットを導入したパネル分子の高効率な合成を達成した。通常では収率の悪い環化反応に対して、本手法では30%収率で目的物を得ることができた。2に関して、ターゲットとする分子ピンセットのモデル化合物として、アントラセン環を2つの2級アミドとピリジルユニットで連結した蛍光性分子ピンセットの合成に成功した。分子ピンセットはアントラセンに由来する強い青色蛍光を示した。さらに水素結合とパイ相互作用から、極性官能基を有する色素分子の包摂に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、まず研究課題として計画していた鍵パネル分子であるアントラセン環をアセチレンで連結した大環状2量体の高効率合成を達成した。本研究は機能探索が主となるため、原料の量産体制を整えられた事は非常に意味のある成果といえる。また、ターゲットとする分子ピンセットのモデル分子の合成にも成功し、当該分子がホスト能を有することが判明した。以上のことから、概ね順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度合成した鍵パネル分子を用いた分子ピンセットの合成を行い、その分子内包能を評価する。また、その二量化から目的とするダブルピンセット型分子の合成を行い、超分子ポリマーへの展開を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍に伴う研究活動の制限及び出張キャンセルのため、請求額の半分以上を次年度に使用する事となった。翌年度は当該額と合算し、研究設備品と人件費に使用する予定である。
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