研究実績の概要 |
本年度は、研究計画に従い、amphidinolide Nの推定構造において最も信頼性の低いC7、C10、C14の立体を自在に作り分ける手法の確立を試みた。申請者は、これまでに研究室において独自に開発した不斉アルドール反応を利用することで、C7位およびC10位の立体を制御しながらamphidinolideの部分構造を構築する手法をすでに確立している。今回、これまでに確立した方法論を利用してamphidinolide NのC1-C13フラグメントを合計4種類合成した。すなわち、C7位、C10位の立体それぞれについて、(R,R)、(R,S)、(S,R)、(S,S)の立体を有するフラグメントを、それぞれ2g程度合成した。このようなC1-C13フラグメントはamphidinolide Nの中でも最も官能基化されたフラグメントであり、合計で40段階程度の工程数を必要とする。このような複雑なフラグメントをグラムスケールで供給することができる、非常に堅牢なルートが確立できた。次に、(S,R)の立体を有するジアステレオマーを原料とし、今回新たに開発したジアステレオ選択的アルキル化反応を行うことで、C1-C13フラグメントと、C14-16フラグメントのカップリングに成功した。本反応は非常に高い収率で進行し、新たに構築されるC14位の立体はC16位に対してsynであることがNOESY等の測定により分かった。その後、C17-C29フラグメントとのカップリングを連続的に行うことで、amphidinolide Nの全炭素が導入された重要中間体の合成に成功した。今後はマクロラクトン化を行ったのち、官能基変換と保護基の脱保護を行い、C14位とC16位がsynの立体構造を有するamphidinolide Nの全合成を行う。
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