今回、申請者はC7位エピマー体の合成ルートを改良し、中間体であるC1-C13フラグメントをデカグラムスケールで合成する事に成功した。また、この合成法ではC7位エピマーだけでなく、C10位のエピマー体についても発散的に合成することができ、C7位C10位のジアステレオマーである4つの異性体を全てグラムスケールで合成することに成功した。また、既に合成及び構造決定を行っていたC7位のエピマー体について、昭和薬科大学の久保田教授との共同研究により、その生物活性について調査した。その結果、KB cellに対してIC50=6 μg/mL、L1210 cellに対してIC50=2.8 μg/mLの活性を示すことが明らかとなった。これまでに全体構造の合成とその生物活性を評価した例は無く、今回初めてamphidinolide Nの全体構造を有する化合物が生物活性を有することを明らかとした。小林らによって報告されたamphidinolide Nは上記二つの細胞に対してそれぞれIC50=0.06 μg/mL、IC50=0.05 μg/mLと今回合成したC7位エピマー体に比べて遥かに強力な生物活性を有するものの、立体構造が生物活性に与える影響の大きさを示すことが出来た。残りのジアステレオマーについてはまだ合成が完了していないものの、C10位エピマー体については中間体であるマクロラクトンを300mg以上合成することに成功した。現在、C9位アシル基の脱保護と続くケトンへの酸化の検討を行っている。今後は各ジアステレオマーの合成と構造決定、活性評価を行っていく予定である。また、合成難易度が高いC14位のエピマー体についても、最終段階での脱保護条件を含めた検討を行う予定である。
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