研究課題/領域番号 |
20K15279
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
植竹 裕太 大阪大学, 工学研究科, 特任助教(常勤) (10755440)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金/パラジウム合金ナノ粒子 / 脱水素芳香族化 / X線吸収スペクトル / 反応機構解析 |
研究実績の概要 |
歪みを持つ非平面π共役化合物は、特異な光特性や半導体特性などを示すことから次世代の機能性材料として注目を集めている。一方で、その 合成法は化学量論量の酸化剤、還元剤を用いる苛烈な条件を要するため、より効率的かつ環境に配慮した反応の開発が急務である。 本研究では、金属および合金ナノクラスター触媒を用いた高歪みπ共役化合物の脱水素芳香族化反応の開発を目的としている。 金/パラジウム合金ナノ粒子を、当研究室で開発したtrans-deposition法を用いてLDHに担持させた触媒を用い、それを用いてジヒドロアントラセンのエチレンを用いた脱水素芳香族化を試みたところ定量的に反応が進行し、アントラセンが得られることを見出した。加えて担持固体であるLDHのみを反応に供した場合にも反応は進行し40%という中程度の収率ながら目的生成物が得られることがわかった。調製した金属ナノ粒子の評価のため、放射光XAFSを用いた分析実験を実施した。その結果、金とパラジウムは均一に混ざり合ったランダム合金となっていることがわかった。 本研究課題の遂行によって放射光XAFSに関する知識・知見を得ることができたため、それを均一系触媒反応の反応機構解析への適用検討ならびに設備整備を開始した。2020年度には大阪大学内外の6つの研究グループと共同研究を開始し、いずれも順調に研究が進捗している。特に、塩基を用いない鈴木-宮浦クロスカップリング反応に関する研究では、第101回日本化学会春季年会においてハイライト講演に選出された。また本研究の実施期間中には、有機合成化学協会の研究企画賞も受賞できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請の検討そのものは遅滞なく進捗しており、計画通り次年度にはより複雑な高歪みπ共役化合物の脱水素芳香族化反応に着手する予定である。加えて、本研究を通じて放射光施設を利活用したことで、それらの知見を均一系触媒反応の反応機構研究に応用し、多くの共同研究を新たに立ち上げることができた。これは課題申請当初は想定していなかった科学の広がりであり、今後継続して研究を推進することでより実りのある研究成果につながると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初の計画通り研究を推進することで当初の研究目標は達成できると考えている。2021年度には調製したナノ粒子触媒の精密な分析のため、分光分析用の低温装置を導入する予定であり、それを活用することでより実りのある研究成果へとつなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗により放射光施設用の低温セルを導入する必要が発生したため、2020年度の途中に、2021年度の費用と合算して購入する計画を立てた。そのため、2021年度使用額が生じている。低温装置はおよそ900千円であり、放射光施設における担当者との打ち合わせののち、2021年度秋季のからの運用を目指す。
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