研究課題
歪みを持つ非平面π共役化合物は、特異な光特性や半導体特性などを示すことから次世代の機能性材料として注目を集めている。一方で、その 合成法は化学量論量の酸化剤、還元剤を用いる苛烈な条件を要するため、より効率的かつ環境に配慮した反応の開発が急務である。 本研究では、金属および合金ナノクラス ター触媒を用いた高歪みπ共役化合物の脱水素型反応の開発を目的としている。2021年度では、水酸化フラーレンを保護剤として用いる銀ナノ粒子触媒(Ag:C60(OH)12)を新たに開発し、その触媒がベンジルアルコールとケトンの水素移動型カップリング反応を高効率で触媒することを見出した。また、一般に銀ナノ粒子触媒は安定性が低いことが知られているが、本触媒は溶液中で8ヶ月間安定であることがわかった。また、2020年度末から開始した放射光XAFSを用いた均一系触媒反応の反応機構解析ならびに設備整備を実施した。2021年度には大阪大学内外の複数の研究グループと共同研究を展開し、それに関する論文を年度内だけで3報報告することができた。特に、理化学研究所と進めていた「塩基を用いない鈴木-宮浦クロスカップリング反応」に関する研究はNature Catalysis誌に掲載され、プレスリリースを行った。また本研究内容は、同誌12月号の表紙に選定され、広く公知とすることができた。加えて、均一系触媒反応の低温in situ XAFS測定の高度化を目指し、溶液XAFS用低温装置を製作した。独自に開発した装置を用いて低温XAFS実験を実施し、室温では分解してしまうボリル銅錯体の溶液中における構造を明らかにすることができている。本研究は2022年度に論文投稿を行う予定である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) 図書 (1件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件)
The Journal of Organic Chemistry
巻: 87 ページ: 2508~2519
10.1021/acs.joc.1c02416
Chemistry - An Asian Journal
巻: 16 ページ: 2280~2285
10.1002/asia.202100495
Chemistry - A European Journal
巻: 27 ページ: 17952~17959
10.1002/chem.202103485
RSC Advances
巻: 11 ページ: 35342~35350
10.1039/d1ra07723f
Nature Catalysis
巻: 4 ページ: 1080~1088
10.1038/s41929-021-00719-6
https://www-chem.eng.osaka-u.ac.jp/~sakurai-lab/publications.html
https://researchmap.jp/yutauetake
https://orcid.org/my-orcid?orcid=0000-0002-4742-8085