本研究ではナザロフ反応を基盤として、生体環境で利用可能な「分子放出反応」の開発を目的とした。一般的なナザロフ反応では塩酸などの強酸を作用させる必要があり、これが分子放出反応へと応用する際の課題であった。そこで、弱酸応答性の向上のため、ジビニルケトンのルイス塩基性の向上、環化の活性化エネルギーの低下、脱フェノールによる反応の不可逆化を鍵とした「高度活性化ジビニルケトン」を設計し、その反応性を評価した。その結果、この基質は弱酸のみならず、メタノールや水などの中性プロトン性溶媒中、室温にてナザロフ反応が進行することを見出し、前例のない中性ナザロフ反応の開発に成功した。
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