研究課題
ペプチド構造は,タンパク質を構成する構造であり,生命科学分野において重要な役割を果たしている.しかし,ペプチドには,アミノ基などの求核性部位が多数含まれるため,望みの箇所を選択的に修飾することは困難を極める.例えば,数が多く,求核性の高いリシンのアルキルアミノ基が無作為に修飾されることが大きな問題であった.これに対して,大半は1ヶ所しか存在せず,機能にも影響を与えにくいN末端の修飾が注目を集めている.このような背景から最近,N末端アミンのイミン形成を経由する革新的なN末端選択的修飾法が開発されたが,平衡的な脱離を起こしやすい点や,反応効率が悪く大量の試薬を必要とする点などの課題があり,新たな手法の開発が強く望まれていた.これに対して,本研究課題では,反応活性種の「アゾメチンイリド」をN末端のみで発生させられるのではないかという作業仮説のもとで ,N末端のみで選択的にペプチドを修飾できる新たな手法の開発に取り組んだ.検討の結果,Cu触媒をXantphos配位子と組み合わせることで,定量的かつ完全なジアステレオ選択性 (exo選択的)で,反応が進行することを明らかにした.本反応は,アジド基やアルキン部位を有する場合にも定量的に進行し,実際にClick反応と併用することにも成功した.このことから,位置および個数選択的なペプチド修飾法として有望であるといえる.また,最終年度の検討においては,本手法を多彩なイミン構造やマレイミド誘導体に適用できること,より長鎖のペプチドに利用できること,N末端グリシン選択的に進行することなどを明らかにした.加えて,システイン残基から発生可能なデヒドロアラニン構造を求電子剤とする反応の開発にも成功した.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 7件)
Bulletin of the Faculty of Science and Engineering, Chuo University
巻: 27 ページ: 15~33
Chemistry An Asian Journal
巻: - ページ: -
10.1002/asia.202200239
Organic Letters
巻: 23 ページ: 4966~4970
10.1021/acs.orglett.1c01294
The Journal of Organic Chemistry
巻: 86 ページ: 14586~14596
10.1021/acs.joc.1c01440