研究課題/領域番号 |
20K15289
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
荻原 陽平 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 講師 (00734394)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | チオフェン / アルキン / 単体硫黄 / [2 + 2 + 1]環化付加 / 触媒 |
研究実績の概要 |
本研究は、1,3-ジインと単体硫黄(S8)から、[2 + 2 + 1]環化付加反応を経て、「チオフェン骨格を構築しながらポリチオフェンを合成」できる新しい触媒反応の開発を目的としている。 申請時の研究計画に従い、初年度は素過程の開発に取り組んだ。すなわち、2分子のアルキンと単体硫黄からチオフェン環を構築する[2 + 2 + 1]環化付加反応の達成を目指した。 フェニルアセチレン誘導体と単体硫黄との反応において、触媒や溶媒、添加剤などの各種反応条件の探索研究を行なった結果、ある特定の条件で反応を行なうと、望む環化反応が進行し、収率20-30%程度でチオフェン誘導体が生成することを見出した。なお、このとき生成したチオフェンは2,4-ジアリールチオフェン、2,5-ジアリールチオフェンの混合物として得られた。一方で、この素過程を重合反応(ポリマー化)へと拡張するためには、この素反応が定量的に進行しなければならない。したがって、チオフェン構築反応の数値目標は「収率99%以上」であった。しかし、反応条件の最適化を試みて、各種検討を行なったが、収率の向上には至っていない。 検討の過程で、プロパルギル化合物と、サリチル酸あるいはアミノ酸誘導体に対して、パラジウム触媒を作用させると、これまで知られていない様式の環化反応(形式的には[5 + 1]あるいは[4 + 1]環化)が進行し、高度に置換された6員環および5員環の複素環生成物が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度中に素反応([2 + 2 + 1]環化付加)を定量的に進行させ、2021年度は重合反応へと移行する計画であった。しかし、前述(研究実績の概要)の通り、目的の反応は20-30%程度の収率に留まっている。この理由は以下2点である。
(1) フェニルアセチレン誘導体(末端アルキン)を当初のモデル基質として用いていたが、予想以上に末端アルキンが原因の副反応が進行した。
(2) (1)の状況を踏まえ、検討途中で見つかった[5 + 1]あるいは[4 + 1]環化にリソースを振り分けた。
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今後の研究の推進方策 |
同一分子に内部アルキンを有する1,6-ジインなどを基質に用いた、2成分の環化反応を行なう。また、現実的な年度内達成目標を、このチオフェン形成の素反応の収率向上(70%以上)へと再設定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)反応基質の調査がやや遅れており、それに伴う試薬購入の支出をまだ行なっていないため。 COVID-19などの影響で、旅費に伴う支出を行なっていないため。 (使用計画)試薬購入は行なうが、旅費の支出は見直す。
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