研究実績の概要 |
2つのアルキン(三重結合分子)と単体硫黄(S8)を出発物質とする[2 + 2 + 1]環化付加反応によって、「チオフェン環を形成しながらポリチオフェンを構築」できる触媒法の創出を目的とする。そのための第一段階として、素反応である「触媒的チオフェン骨格形成反応」の達成を目指し研究を行なった。 初年度(2020年度)、フェニルアセチレンなどの末端アルキンを中心に検討を行なった結果、想定以上の副反応が観測された。そこで当該年度(2021年度)は、1,6-ジインの内部アルキンをモデル基質として、以下(1)(2)(3)の手順で検討を行なった。(1)1,6-ジインの合成 (2)1,6-ジインと単体硫黄を用いた反応 (3)生成物の単離と構造決定 (1)1,6-ジインの合成: マロン酸エステルとプロパルギルブロミドを反応させ、対応する1,6-ジインの前駆体を合成した。この分子の末端アルキン部分を、ハロゲン化アリールとの薗頭-萩原クロスカップリングによって内部アルキンへと誘導した。この二段階の合成法を用いて、いくつかの類縁体の合成も行なった。 (2)1,6-ジインと単体硫黄を用いた反応: 触媒、配位子、溶媒、添加剤、反応温度、反応時間などの各種条件検討の探索を行なった。その結果、特定の触媒条件において、最高60%程度の収率で望む反応の進行を確認できた(論文、学会など未発表のため、詳細は未記載)。 (3)生成物の単離と構造決定: 収率が良かった条件において、生成物の単離を行ない、NMRなどを用いてその構造決定を試みたところ、想定通りのチオフェン誘導体が形成されていることが明らかになった。
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