本研究では、Ln-Ptヘテロ金属錯体のLn-Ptイオン間のドナーアクセプター相互作用の物性への影響を調査し、今後の磁性材料開発に向けた重要な知見を得ることを目的に研究を行った(Ln:ランタノイド、Pt:白金)。以下成果の概要を示す。 1.新規Ln-Pt錯体の合成に成功し、Gd錯体においては45 Kまでの遅い磁化緩和を実現した。また、Tb錯体においては、室温ではPt由来の燐光、低温ではPtからTbへのエネルギー移動により、Tbのf-f発光が観測された。このように物性からLn-Pt相互作用の存在を示唆することができた。 2.Pt L3端におけるX線非弾性散乱(RIXS)の測定により、LnイオンとPtイオンの相互作用があることが実験的に直接可視化することに成功した。従来の金属間距離やDFT計算などによる相互作用の推定ではこの相互作用はないもしくは非常に弱いと判断されるため、この結果は従来の評価方法が相互作用を過小評価することを示した。また、新たにTb L3端におけるRIXSの測定によりTb側からも同様の相互作用を可視化することにも成功した。 本研究では、Ln-Pt相互作用により、磁性、発光などの物性が発現することを明らかにした。また、RIXS測定により、従来の相互作用の評価方法では、金属間相互作用が過小評価されている可能性が示唆された。この結果から従来の評価方法がどの金属間距離でも絶対値として過小評価なのか、ある一定距離以上で閾値があるかについても、調査する必要性があると考えられる。今後は、実験系と理論系のギャップを埋め一般化していくべく、系統的な調査が必要となる。
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