本研究では、2つの鉄間を2つの酸素が架橋(「二重架橋」)した金属酵素の活性点の模倣構造を、ルテニウム(Ru)により創製した。生成物の電子状態は形式上III価-IV価であり、末端にアクアおよびヒドロキシド配位子を有する。合成の合理性(純度・収率、ステップ数)、原料の反応性の検討から、Ru間を1つの酸素が架橋した錯体の塩基性水溶液中の反応が最適であった。二重架橋構造上に炭酸イオン等の架橋配位子を有する錯体の反応では目的物は得られず、別の観点で興味深い知見を得た。生成物の酸化還元電位やpKaより90 kcal mol-1を超える結合解離自由エネルギーが示唆され、酸化反応場としての可能性を見出した。
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