研究課題/領域番号 |
20K15304
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
服部 陽平 龍谷大学, 先端理工学部, 助教 (30843271)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / 蛍光 / 有機化学 / 錯体化学 |
研究実績の概要 |
非対称ジアリールエテン配位子の光異性化(フォトクロミズム)と金(I)錯体の結晶構造による発光挙動の変化(ルミノクロミズム)を組み合わせて、光に応答して発光特性が変化するフォトルミノクロミックなジアリールエテン金(I)錯体結晶を開発することが本研究の目的である。そのためには(1)金(I)錯体の発光に干渉しないよう短波長光で異性化を示し、(2)異性化によって形が変わることで配位子場ではなく結晶構造を通して錯体発光に影響を与えるような配位子が必要である。 金(I)イオンへの配位部位として、まずはピリジル基を持つオキサゾールジアリールエテンを新規に合成し、合成法を確立した。途中のカップリング反応の原料を合成する過程でオキサゾールの副反応が起こったこともあり、全収率は0.3%であった。そのため、今後収率の向上やスケールアップが必要となる。 精製したジアリールエテンの溶液に紫外光を照射したところ、開環体から閉環体への異性化が起こることがわかった。反応量子収率はやや低く、光定常状態における変換率は60%程度であった。開環体・閉環体共に、吸収波長は470 nm以下であり、閉環体は通常のジアリールエテン閉環体のような長波長吸収を持たなかった。これは発光金(I)錯体と組み合わせた時に、錯体側の発光を消光しないために望ましい特長であると考えられる。また、開環体はピリジル基をもたないオキサゾールジアリールエテンと同様に強発光性であり、閉環体は弱い発光性であった。そのため発光錯体との相性も悪くないものと推察される。 また、ヒドロキシ基を持つオキサゾールジアリールエテンについても合成ルートを考案し、いくつかの原料を合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスによる研究室の閉鎖(主に4-5月)や使用制限(6月にかけて)の影響があり、合成計画に2ヶ月程度の遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
ピリジル基をもつオキサゾールジアリールエテンの合成の収率の向上やスケールアップを行い、それを配位子として用いて金(I)錯体をはじめとする様々な発光性金属錯体を合成する。 ヒドロキシ基をもつオキサゾールジアリールエテンの合成を行い、同様に発光性錯体の合成を行う。また、他の配位部位をもつオキサゾールジアリールエテンについても合成の検討を行う。 発光性金属錯体が合成できた場合にはそのフォトクロミズム特性や光物性やについて望ましい性質が得られているかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学からの助成により予定していた実験機器(実験共通機器)や試薬を購入できたため支出が大幅に浮いた。今後も機器や高価な試薬の必要性に変わりはなく、新型コロナウイルスの影響もあって今年度主な試薬メーカーで実施された5割近い大幅な値引きキャンペーンや大学からの助成のこのテーマへの振り分けは当てにできないため、次年度以降実験機器や試薬を主とする物品購入に使用していく計画である。
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