研究課題/領域番号 |
20K15306
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
梅山 大樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 独立研究者 (00821480)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 欠陥導入 / 触媒活性 |
研究実績の概要 |
M(pz)[M'(CN)4]で表されるホフマン型三次元配位高分子(M = Fe2+, Co2+, Ni2+; M' = Pd2+, Pt2+; pz = ピラジン)は、合成後有機溶媒に浸漬することで部分的な配位子交換が起こり、Mイオンの近傍で欠陥構造を生成することが分かっている。この配位子交換による欠陥生成濃度が有機溶媒にどのように依存するか調べた。配位子交換のための有機溶媒はメタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタンを検討した。この結果、メタノールを用いたときに選択的に高い濃度で欠陥が生成し、他の有機溶媒ではメタノールの10%以下の欠陥濃度にとどまることが明らかとなった。一般に配位高分子の合成後配位子交換は熱力学的因子と速度論的因子の両方に依存すると考えられているが、メタノールよりもpKa値が大きいエタノールや2-プロパノールではほとんど欠陥生成が起こらなかったことから、M(pz)[M'(CN)4]での欠陥生成は速度論的な要因が支配的であると考えられる。実際、メタノールはこの実験で試した溶媒の中で最も小さな分子サイズを持つことから、配位高分子中での拡散速度が欠陥生成を支配していると考えられる。 欠陥生成した配位高分子をケトンのアセタール化反応の触媒として試験したところ、メタノール溶媒中で良好な触媒活性が得られた。一方、溶媒をジクロロメタンに変更した場合は活性は失われることが分かり、溶媒種による欠陥濃度の制御を通して触媒活性が制御できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
配位高分子のが有機溶媒中で起こす欠陥生成の濃度と溶媒種の関係を系統的に比較でき、欠陥生成が速度論的因子で支配されていることを解明できたため。また、用いる有機溶媒種を変えることで欠陥濃度が制御でき、触媒活性との相関を解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究からFe(pz)[Pd(CN)4]はFe(II)のスピン状態を通して欠陥濃度が制御可能であることが分かっている。Fe(II)が低スピン状態の場合、欠陥生成が大きく抑制されることから、低スピン・高スピン状態の相互変換による触媒活性の制御が可能であると期待できる。また、これまで検討していないM(pz)[Ni(CN)4](M = Fe2+, Co2+, Ni2+)についても同様な欠陥生成が起こるか調べ、系統的な理解を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
育児休業取得により実験計画の一部が未実施となった。未使用額は次年度の実施計画にあるスピン状態を介した触媒活性制御の検討のための試薬購入や、スピン状態の決定のための有機溶媒中での磁化率測定の実施に充てる予定である。
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