研究課題/領域番号 |
20K15307
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三原 のぞみ 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00867989)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Π平面性分子 / Π-Πスタッキング / ラダーポリマー / 刺激応答性 |
研究実績の概要 |
ラダーポリマーはモノマーユニットが2本以上の結合で連結されたポリマーである。これらのポリマーは一般的に剛直な秩序構造を有するため、刺激応答性を付与することは困難である。ラダーポリマーに刺激応答性を付与できれば、異なる秩序構造を持つポリマー間の可逆構造変換が可能になると期待できる。本研究は、化学刺激の添加に応答して変形できる柔軟性を有する新規ラダーポリマーの構築を目的とする。ラダーポリマーの構造として、Π平面性分子が2本の共有結合によりスタッキング型に連結された構造をデザインした。このポリマーにおいては、Π平面性分子間の相互作用を化学刺激により変化させることで、ラダーポリマーの変形が可能であると期待できる。合成戦略として、まずΠ平面性分子の直線型ポリマーを合成し、Π平面性分子間の超分子的な非共有結合性相互作用を利用して、隣り合うポリマーを連結しラダーポリマーを得るという新規合成戦略を考案した。ポリマー形成のためのモノマーユニットとして、電子アクセプター性を有するΠ平面性分子であるナフタレンジイミドに連結部位を導入した分子構造をデザインした。本期間においては、「1. ナフタレンジイミドを中心骨格とするモノマーユニットの合成」、「2. ラダーポリマーの前駆体である直線型ポリマーの構築」、および「3. 2分子のナフタレンジイミドが連結された直線型二量体におけるラダー構造形成反応の検討」をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本期間においてはまず、電子アクセプター性を有するΠ平面性分子であるナフタレンジイミドを中心骨格とするモノマーユニットを2ステップで合成した。このモノマーユニットの重縮合反応により、ナフタレンジイミドが直線的に連なったポリマーを得た。さらに、モノマーユニットの直線型二量体を別途合成した。この直線型二量体において、オレフィンメタセシス反応を利用することで、ラダー構造が高収率で得られることを見出した。直線型ポリマーにおけるラダー構造形成反応にでは、隣り合うモノマー同士が連結されず、ランダムな連結反応が起こったことを示唆する結果が得られた。ラダーポリマーの前駆体を構築でき、ラダー構造形成反応の検討も進んでいることから、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
高効率なラダー構造形成反応のため、ゲスト分子の添加により直線型ポリマーの折り畳み構造を形成させる。その後隣り合うモノマー同士を連結し、ラダー構造を得る。また、ラダーポリマーの最小単位であるラダー型ナフタレンジイミド二量体を別途合成し、その分子認識能を調査することで、ラダーポリマーの分子認識能に関しての知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
前所属機関から現所属機関への転出が決定し、研究計画を変更する必要が生じた。また、応募時には出張を計画していたが、新型コロナの影響で出張ができず旅費として使用できなかったため、次年度使用額が生じた。本年度は、有機化合物の精製のための装置の購入に予算を使用する予定である。
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