本研究は,ポリオキソメタレート(POM)を配位子としたランタニド(Ln)錯体(Ln-POM錯体)についてイメージングプローブへの応用を試み,POMがLn錯体のイメージングプローブとして有用であることを明らかにすることが目的である.また,多核Ln-POM錯体を用いることで,異核化によるデュアルモーダルなプローブやf-f communicationによる多機能なプローブ設計を目指すものである. 最終年度では,ケイタングステン酸を配位子に用いた異核Ln-POM錯体の合成と機能評価に取り組んだ.Yb-Ln(Ln=Nd or Er)の組み合わせで異核Ln-POM錯体の合成を試み,同核錯体との混合物として異核Ln-POM錯体の合成に成功した.また,Nd→Ybエネルギー移動やYb→Erエネルギー移動の存在が示唆され,異核化による多機能化が可能であることを見出した. 本研究全体を通し,POMとしてケイタングステン酸を配位子に用いたLn-POM錯体は固体,アセトニトリル中,水溶液中でエネルギー移動発光を示すことを明らかにした.また,Eu-POM錯体においてはエネルギー移動発光を示すと同時に水溶液中で高い速度論的安定性を有しており,発光プローブとして期待できることがわかった.また,異核化による多機能化も可能であることが明らかになった.一方,LnやLnの組み合わせは一部のみの調査であるため,より広範囲なLn・Lnの組み合わせでの調査が必要である.今後,有望な機能を持つLn-POM錯体あるいは異核Ln-POM錯体を選択し,実際に細胞イメージングへ応用することが期待できる.
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