研究課題
最終年度では、前年度まで開発してきた新規方法(D-RINEPT-MQMAS)の論文化を主に実施した。新規手法の測定例としてγアルミナ(27Al、17O)、ZnOナノ結晶(17O)、BN/SiO2(11B)を取り上げて結果をまとめた。これらの金属酸化物は固体触媒や光エレクトロンクス材料など幅広い分野で重要である。1次元のDNP-NMR測定では不明確であった詳細な局所構造をD-RINEPT-MQMAS測定により、明確に示すことができた。本成果は米国化学会のThe Journal of Physical Chemistry Letters誌に掲載、さらにsupplementary coverに選ばれ、現在のところ編集者、査読者から高い評価を得ている。本研究の本来の目的は、D-RINEPTパルスシーケンスと高磁場DNP-NMR装置(800MHz)を組み合わせることでの有用性を示すことであったが、コロナ禍によって実施が困難になったことにより計画を変更し、通常の400MHzのDNP-NMR装置でも四極子核の高分解能測定が実施可能な新規のD-RINEPT-MQMAS測定法の開発につながった。さらに後半にはD-RINEPT-MQMAS測定を実施するための金属酸化物の最適な17O同位体ラベル化方法を探索し、構築することを進めていった。目的の測定試料によって最適な17Oラベル化処理を適用することで、DNP-NMR装置上でのD-RINEPT-MQMAS測定による表面構造解析を広範囲の金属酸化物に適用することが可能となった。本研究の成果はこれまででは達成することができなかった金属酸化物の詳細な固体NMRによる表面化学構造解析を達成することができるユニークな解析方法であり、幅広い材料分野の表面構造解析研究にインパクトを与えると期待される。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
The Journal of Physical Chemistry Letters
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