研究課題/領域番号 |
20K15321
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中林 康治 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (80752550)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炭素繊維 / 重質油 / カーボンニュートラル / 二酸化炭素ゼロエミッション |
研究実績の概要 |
過去300年に渡る石油文明は人類に繁栄を齎した一方で莫大な二酸化炭素(CO2)消費による環境負荷を顕在化させた。エネルギー源としての石油消費時代は終焉を迎えつつあり、循環資源として石油を活用する新たな概念の創出が喫緊の課題となっている。本研究では、持続可能社会の実現に向けて、重質油を利用したCO2ゼロエミッション型の炭素構造体変換システムを提案する。一般的に燃料として用いられる重質油から炭素構造体(炭素繊維)に転換する技術を確立できればCO2の大幅削減が達成されることのみならず、構造体として自動車車体や建材、航空宇宙機材への高度利用は勿論のこと、構造体として炭素を貯蔵(備蓄)することにも繋がり、革新的な低炭素化社会のプロセスを構築することができる。 以上の背景から、重質油を炭素構造体に変換することによりCO2排出源である石油化学産業をゲームチェンジできるのではないか、と構想するに至った。具体的に本研究では、重質油を原料とし、高付加価値な炭素構造体である炭素繊維の製造に挑戦する。当該システムが実現されれば、年間2990億リットル排出される重質油を一気に炭素繊維へ転換する技術を確立することとなる。また、炭素繊維の原料調達の問題は一掃されることとなり、その原料の安さから爆発的な産業の広がりも期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究状況は、おおむね順調である。重質油から炭素繊維を製造する為には、事前に重質油から金属を十分に取り除かなければならない。当初は、重質油に予想以上に金属が含まれていたため、脱金属処理に、時間を割いた。具体的には、触媒反応を用いて脱メタル反応を行い、金属を取り除いた。更に、重質油は大きな高分子量である為、水素化反応により高分子量体の低分子量体化も行った。その結果、実際に紡糸可能な炭素繊維前駆体を調製することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、現在までの進歩状況で報告したように、調整された炭素繊維前駆体を用いて炭素繊維の紡糸を行う。炭素繊維の紡糸は、様々な紡糸速度で行う。紡糸速度が異なれば、得られる炭素繊維の繊維径がそれぞれ異なることとなり、それと連動して強度も変化する。最終的には、炭素構造体として使用可能な繊維径を有する炭素繊維の調製を実施する。
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