過去300年に渡る化石資源文明は人類に繁栄を齎した一方で莫大な二酸化炭素(CO2)消費による環境負荷を顕在化させました。エネルギー源としての化石資源消費時代は終焉を迎えつつあり、新たな『炭素循環社会の創出』が喫緊の課題となっております。 これまでの研究では、化石資源由来重質油を原料として炭素材料を製造することで、炭素材としての利用は勿論のこと、材料という形で社会に炭素を貯留する持続的産業・社会の実現に貢献する炭素循環に司る研究を行っています。化石資源や残渣を燃料として燃焼させることなく、炭素材料へ変換すれば、実質的なCO2の搬出は抑えられ炭素循環型社会へ貢献できます。また、炭素材料は材料としての利用のみならず『炭素』を貯蔵することに繋がり、我が国が将来的な化石資源の枯渇問題に直面した場合でも、”都市炭山”として炭素が備蓄されているので資源安全保障の面でも大きな社会貢献となります。これまでの研究では具体的に、(1)化石資源(重質油)の物性の理解、(2)重質油を用いた炭素材料への応用を実施してきました。以下に、それぞれの詳細な研究内容を記します。 これまでの研究では、重質油に対する分子種解析や成分分析などの解析に積極的に実施してきました。重質油や残渣は非常に複雑な有機分子構造をもった超多成分の混合物であるため、そのままの状態での高度利用は不可能です。故に利用用途が燃料利用に支配され、結果として大量のCO2が排出されていることが現状の課題となっております。本研究では、重質油・残渣を用いて自動車車体へ適応可能な強度を有する高性能な炭素繊維の製造に挑戦しました。重質油・残渣を高機能な炭素材料へ変換することで、新たなカーボンニュートラルの概念の創出に寄与しました。
|