研究実績の概要 |
光エネルギーを用いて, バイオマスから高機能プラスチック原料がより高効率・低環境負荷で可能となれば持続可能な社会の実現に寄与できる. 本研究では, 非可食性バイオマス由来の5-Hydroxymethylfurfural (HMF)から2,5-diformylfuran (DFF), さらには2,5-Furandicarboxylic acid (FDCA)への選択的酸化反応において, Auナノ粒子-酸化ニオブ(Au/Nb2O5)触媒に光エネルギーを与える事で得られる効果について明らかにすることを目的としている. まず, HMFからDFFへの選択的酸化反応を検討することで, 光触媒能を有する金属酸化物(MOx)のスクリーニングを行った. さらに, 結晶構造の異なるNb2O5を用いることで, 反応に適切なNb2O5の検討を行った. その結果, 酸性MOxに分類されるMOxでHMFからDFFへの選択的酸化反応が確認され, Nb2O5-L, Nb2O5-T, WO3, W-Ti-Oで, それぞれ転嫁率 91%, 48%, 9%, 54%, 選択率 68%, 86%, 47%, 80%を示した. 次に, Auナノ粒子を担持した触媒を用いて, 触媒反応の効率化を検討した. 酸性MOxであるNb2O5には, 従来の析出沈殿法では直径5 nm以下の金ナノ粒子を担持することが困難であったが, チオール保護金クラスターの固定化により, 小さな金ナノ粒子を担持したAu/ Nb2O5の調製が可能になった. よって, この方法を用いて, 光触媒活性を示す金ナノ粒子を担持して, 光触媒反応を行った. その結果, Au/Nb2O5-Tで, 21%の転嫁率, 6%の選択率向上という活性向上が確認された. Auナノ粒子を担持することで, Nb2O5-Tの光触媒能を向上させることが可能であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来の目的通り, Nb2O5光触媒にAuを担持することでNb2O5の光触媒能を向上させることに成功した. この調製されたAu/ Nb2O5触媒はHMFからDFFへの選択的酸化反応に適しており, 転化率69%, 選択92%であった. しかし, Auナノ粒子担持によるNb2O5の光触媒能を向上のメカニズムを明らかにするため, 活性向上が確認された触媒の詳細な物性評価と, 更なる触媒のスクリーニングが必要である.
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今後の研究の推進方策 |
Auナノ粒子担持によってNb2O5の活性が向上した理由を明らかにするため, Auナノ粒子担持によって活性向上が確認された触媒のAuナノ粒子形状を透過型電子顕微鏡 (TEM)で観察する. その他, X線結晶構造解析 (XRD)など触媒の物性評価を進めていく. さらに, Au以外の金属(Ag, Cu, In, Pd, Pt, Ru)を担持し, 金属のスクリーニングを行う. これによって, Auナノ粒子がNb2O5に与える影響を明らかにすることで, Auナノ粒子担持光触媒の適切化を図る. また, 適切化された触媒を用いて, 室温での反応が困難であるとされるHMFからFDCAへの選択的酸化反応にも挑戦する.
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