令和4年度は、MgFe2O4を母材に黒色系遮熱顔料の作製を行った。Zn-Fe系スピネル酸化物(ZnFe2O4)と同様に、La添加によって微粒子化が確認された。粉末と顆粒状の顔料試料を用いて、粒子形状の違いが近赤外反射特性に与える影響を調べた。Mnを添加すると黒色顔料が得られたが、近赤外線反射率が予想に反して低下した。この原因については調査を進めている。 また、ZnFe2O4について、原子レベルでの局所構造を解明するため透過型電子顕微鏡観察を実施した。無添加のZnFe2O4粒子のサイズは0.2 μm程度であった。Laを添加すると10~20 nmのZnFe2O4粒子が観察され、Scherrer式より算出される結晶子サイズとよく対応した。エネルギー分散型X線分光法(EDS)による元素分析により、LaはZnFe2O4結晶粒子内部に均一に分布しているが、結晶粒界にも偏析していることが確認された。添加されたLaは、固溶限界以上ではZnFe2O4粒子の表面や界面に存在しており、結晶子成長の抑制や微細構造に影響を与えている可能性が示唆された。また、試料合成過程で混入したものと推測されるSiやMgの存在が確認されており、今後調査を進める予定である。
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