研究課題/領域番号 |
20K15327
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
松川 裕太 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 客員研究員 (10848526)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光触媒 / 光反応 / マイクロ波 / 酸化反応 / スルホキシド / アルキン / ケイ素 |
研究実績の概要 |
環境調和型の薬理活性物質合成を指向した人工光合成系を目指して、微細剣山状に処理したシリコン基板上に微量の金属ナノ粒子を積層させたナノ空間型シリコン-金属ナノ 粒子 (Silicon Nano Array-Metal = SiNA-M) 触媒による二酸化炭素固定の開発を行っています。SiNA-Mは金属の漏出が極めて少なく、かつ堅牢であり、さらに主原料が地表存在比最大の資源: ケイ素であることから、不純物の残留に対して厳しい制限がある薬理活性物質合成において理想的かつ元素戦略性に優れた系の開発が期待できます。 令和2年度では、SiNA-Pdを用いたフェニルアセチレンへの光二酸化炭素固定を研究するなかで、溶媒のジメチルスルホキシドが対応するスルホンへと酸化されたことを見出しました。対照実験により、系中においてSiNA-Pdの寄与なしでフェニルアセチレンが触媒として機能し、熱源のマイクロ波によって収率が向上することを見出したことで、フェニルアセチレン触媒による光-マイクロ波協働的なスルホキシド基質の自動酸化系を構築することに成功しました。光-マイクロ波協働効果による合成は、ならびにフェニルアセチレンを光酸化触媒とする反応はいずれも初の報告例です。本系においては触媒が、酸素分子と反応する過程において十分に長いりん光寿命をもつことが重要であり、マイクロ波が触媒の三重項励起準位に作用することでりん光寿命が延長されることがこのマイクロ波効果の主要因の一つであることを、各種機構研究により明らかにしました。また、同条件下では一般的な光増感剤よりも高効率であることがわかり、本協働触媒の優位性も示されました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工光合成開発における有益な結果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で明らかとなった光-マイクロ波協働系の機構研究をさらに進めることで、さらなる高効率触媒の開発、ならびに人工光合成系への応用を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延に伴い、通常出張を伴う会議がオンライン開催となったことで旅費を使用しなかったため。
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