持続可能性が重視される昨今、化学プロセスにおいても地球環境に配慮した合成系の開発が急務といえます。そこで、環境調和型の薬理活性物質合成を指向して、微細剣山状に処理したシリコン基板上に微量の金属ナノ粒子を積層させたナノ空間型シリコン-金属ナノ粒子 (Silicon Nano Array-Metal = SiNA-M) 触媒を用いた二酸化炭素固定系開発に、2020年度から2021年度の若手研究として取り組みました。2021年度では、SiNAにパラジウムを担持させたSiNA-Pdを触媒とし、DMF溶媒中130℃でトリエタノールアミンを犠牲還元剤として用いたヨードアレーン基質の脱ヨウ素化反応系を見出しました。標準条件では4-ブチルヨードベンゼンが1.5 hで脱ヨウ素化され、収率91%でブチルベンゼンを与えました。本系ではマイクロ波効果が顕著に認められ、マイクロ波なしの単純加熱では、標準条件と同じ130℃において反応が進行せず、170℃においても2%しか進行しませんでした。また、トリエタノールアミンの代わりに水素ガスを用いても3%しか反応が進行しなかったことから、本系においてはトリエタノールアミンが直接的に還元剤として働いており、トリエタノールアミンから生じる水素は殆ど反応に関与していないことが明らかになりました。ハロアレーン基質の比較を行うと、ヨードアレーンはブロモアレーンの約2倍、クロロアレーンの90倍脱ハロゲン化されやすいことが示されました。一般的に還元されやすいベンジルフェニルエーテル、スチルベン、ならびにニトロベンゼン基質共存下においても脱ヨウ素化が約80%の高収率で進行するとともにこれらの基質は約90%で回収され、官能基耐性が示されました。
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