研究実績の概要 |
エンジニアリングプラスチックの1つ、ポリフェニレンオキサイド(PPO)に対し、ヘテロポリ酸のケイタングステン酸、酸化触媒の硝酸イットリウム、高耐久性界面活性剤のノナフルオロブタンスルホン酸カリウム存在下、過酸化水素を添加剤に用いることで、酸化的解重合生成物である2,6-ジメチルベンゾキノン(26DMBQ)を反応系中から直接昇華によって得る新規ケミカルリサイクル法が見出された。本反応は、ケイタングステン酸の非常に高い酸性度に基づき硝酸イオンのプロトン化が進行し、生成するニトロニウムイオン(NO2+)が酸化活性種として機能することが鍵となる。PPO局所構造中の芳香環上にメチル基が2つ導入されており、立体障害を受けてニトロ化が進行しにくく、代わりにNO2+による1電子酸化が進行し、後続の水分子の付加反応やC-C結合の開裂を伴い、対応する26DMBQを与えたと推測される。NO2+による1電子酸化はESRスペクトル測定によって確認され、水分子の付加反応はモデル化合物の反応により推定された。また、NO2+は局所構造の酸化後には亜硝酸イオンとなり、これが過酸化水素によって再酸化を受け、元の硝酸イオンに戻ることで反応が完結する。26DMBQの再利用性を検証するため、4,4’-チオジアニリンとの脱水縮合を検討し、対応するポリイミンの生成が各種測定により示された。 一方、稀有な白金錯体の例として、B原子とP原子を配位子に有するアニオン性白金(0)錯体を合成し、キャラクタリゼーションを行った。嫌気下でのみ安定な白金(0)錯体の金属中心の価数を決定するため、X線光電子スペクトル(XPS)測定を検討した。グローブボックスから嫌気下を維持したまま試料を導入可能な専用器具の利用により嫌気下のXPS測定を可能にし、新規なアニオン性白金(0)錯体の鍵データの取得に成功した。
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