研究課題/領域番号 |
20K15329
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田中 真司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20738380)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エステル交換反応 / ポリマー担持型触媒 / グリシジルエステル / 固体NMR |
研究実績の概要 |
本研究では、植物由来化成品として有望なグリセリンを原料とするファインケミカル合成のための、複合担持型触媒の開発を計画している。本計画の達成には、グリセリンを多段階のエステル交換反応を経てグリシジルエステル等のファインケミカルへと誘導するための新規短時型触媒の設計および開発が鍵となる。そこで今年度は、エステル交換反応に活性を示すポリスチレン担持型触媒を精密に設計、調製、構造解析するための基盤技術を開発した。具体的には、架橋型ポリスチレンに対して、アルキル鎖長の異なる第三級アミンを導入することで、アルキルアンモニウム塩担持触媒を調製した。エステル交換への活性を上げるために、アルキル鎖長に加えて対アニオンを最適化する必要があるが、この時アルキルアンモニウム塩がホフマン脱離等により触媒不活性な第三級アミンへと分解する可能性があることが知られている。そこで、対アニオン交換条件を最適化し、アルキルアンモニウム塩の構造を損なわずに対アニオン交換できる条件を確立した。本研究の特色として、触媒の構造解析に固体NMR分光法を活用することにより、確かな分析結果に基づいた触媒調製が可能であることを示した。さらに、本手法で調製した触媒は、グリシドールとメチルエステルのエステル交換反応によるグリシジルエステルの合成に、高い活性および再利用性を示すことを確認した。また、適した対アニオンを導入することで、様々なアルコールに適用できるエステル交換反応用触媒も開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画を達成する上で、担持型触媒を精密に設計、調製、構造解析するためのプロトコルの確立は重要である。本年度はエステル交換反応をターゲットとすることで、担持型触媒開発のプロトコルを実証することができた。特に、ポリマー担持型触媒は一般的に触媒構造の不確実性が高く、触媒活性メカニズム解明や論理的な改良が困難であった。この点において、申請者は固体NMR分光法を活用することにより、エステル交換反応における活性種の生成メカニズムや、回収再利用後の触媒構造の変化について確実性の高い情報を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で達成したポリマー担持触媒の設計、調製、構造解析のプロトコルを活用することで触媒を論理的に改良し、グリセリンを原料とする連続的なエステル交換に活性を示す触媒を開発する。まず、グリセリンと炭酸ジメチルの反応によるグリセリンカーボネートの合成、グリセリンカーボネートとメチルエステル類の反応によるグリセリンカーボネートエステルの合成についてそれぞれ検討し、最適な触媒構造を見出す。その知見をもとに、双方の触媒反応を一挙に進行させるための複合触媒開発を進め、最終的な目標であるグリセリンからのファインケミカル合成の達成を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は触媒反応検討の効率化のため、五連式の自動合成装置の購入を予定していたが、検討を進める中で触媒調製手順の最適化の必要性を認識し、今年度はそちらを優先的に検討したため購入を見送った。
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